65歳以上介護保険料 団塊世代、要介護増見据え福島県内26市町村が引き上げ 避難区域8町村は減額

 3年ごとに改定される65歳以上の高齢者の介護保険料(基準月額)について今月、約44%に当たる福島県内26市町村が引き上げたことが福島民報社の調べで分かった。据え置きは21、引き下げは12で、市町村ごとに対応が分かれた。増額した市町村は来年、「団塊の世代」の全員が75歳以上の後期高齢者になるため、要介護認定を受ける人が増えるのを見据えた対応を取り、都市部での引き上げが顕著だった。東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域が設定された12市町村のうち8町村が減額した。政府による保険料の減免措置が縮小する中、支払いの負担を抑えて避難者の帰還につなげる狙いがある。

 県内59市町村の改定状況は【表】の通り。県内では2018(平成30)年度の前々回改定時に大半の市町村が増額したが、2021(令和3)年度の前回から、それぞれの事情に応じて対応が分かれる傾向となっている。

 今回は都市部での引き上げが目立ち、13市のうち9市が増額した。727円引き上げて6300円とした郡山市は、高齢者の増加で要介護認定を受ける市民や介護サービスにかかる費用(介護給付金)の増加などを考慮した。担当者は「次の改定以降も増額が進む」との見方を示し、被保険者の負担軽減に向けて健康づくりや介護予防に取り組むとした。南相馬市は475円上げて6375円とした。市内の民間介護施設が受け入れ人数を増やすとの計画を踏まえ、介護需要が増えると見込んだ。

 最高額は三島町の7700円。高齢化率は55%程度で、被保険者に負担がのしかかる。今後増額は避けられない状況だが、「減額できる時はしたい」(町担当者)と300円下げて負担軽減を図った。鮫川村は増額幅が県内最大の1400円。担当者は「高齢化や要介護認定率の上昇など、さまざまな要因が絡み合っている」と語った。

 政府は原発事故に伴う減免措置を段階的に縮小し、避難指示を解除した翌年の4月から原則10年が経過した時点で完全に終了するとしている。一部地域への減免措置が2026年度以降に縮小される富岡町の担当者は「住民の帰還促進も見据え、基金を取り崩すなどして保険料の上昇を抑えた」と説明した。

 据え置いた市町村は、介護需要や介護事業所の設置状況などを考慮したとみられる。

 負担を軽減するには健康寿命の延伸、介護予防の取り組みが欠かせない。県は今年度、市町村の担当者を集め、初めて研修会を開催する。高齢者サロンや健康体操など実施例を共有し、組み合わせるなどして取り組みに反映してもらう。県の担当者は「研修会の成果を普及させ、高齢者が自立した生活を送れる社会をつくる」としている。

※介護保険料 介護保険を運営するため40歳以上が支払う保険料で、40~64歳と65歳以上で仕組みが異なる。介護サービスにかかる費用(介護給付費)のうち、利用者の自己負担分を除いた給付費の半分を保険料、残りを国と自治体の公費で賄う。65歳以上の保険料は市町村が3年ごとに基準額を見直した上で、個人の所得などに応じて支払う。基準額は各市町村の平均値。40~64歳の保険料は健康保険組合などの運営主体が毎年度改定する。

© 株式会社福島民報社