東京の地下鉄は複雑すぎ? 上京者を悩ます“初見殺し”の駅たち…同じ駅名なのに「地上乗換300m」

浅草線蔵前駅からは道路表示にしたがって進まないと大江戸線蔵前駅にたどりつけない【写真:写真AC】

同じ駅名なのに、地上に出ないと行き来できない地下鉄

4月といえば新年度、新学期でもある。東京で新生活を始める人も多くいる季節だが、上京してきたフレッシュマンを悩ませるのが、東京の地下鉄網の複雑さ。うっかり乗換案内を信じて電車を降りると、もはや1駅分と思うくらいに歩かされることもある。

4月上旬ネットで話題になったのは、都営地下鉄蔵前駅の乗換について。「都営大戸線と都営浅草線は別の駅」「蔵前駅ほんと嫌い」「二度と同一駅名だと名乗らないでほしい」といった反応がXで湧きおこった。

非難ごうごうになっていたのは、この駅での浅草線と大江戸線の乗換の遠さである。路線図をみるとしっかり乗換駅になっているが、実際に電車を降りてみると両線は改札どころかいったん地上まで出ないと行き来できない。浅草線の駅は江戸通りの下にあるが、大江戸線の駅は春日通りにあり、厩橋交差点を通って270メートルほど地上を歩く必要がある。さらに地下深い大江戸線のホームまで行かなければならないので、直線距離で想定する以上の乗換時間がかかってしまう。

先に完成していた浅草線の蔵前駅(1960年開業)に、2000年に大江戸線の蔵前駅が開業したことからこのような配置で地下通路もない駅となってしまったが、東京の地下鉄ではしばしばこのような事例がある。大江戸線では他にも本郷三丁目駅が、丸ノ内線との乗換のために地上を歩く必要があり、春日駅も三田線(春日駅)や南北線(後楽園駅)とは近いが、地上になる丸ノ内線後楽園駅とはかなりの距離を歩く。

「同じ駅名なのに遠い乗換駅」があれば、地下鉄に限っても「駅名が違うのに乗換できる駅」がいくつもある。東京メトロの溜池山王駅と国会議事堂前駅、赤坂見附駅と永田町駅が典型で、溜池山王と国会議事堂前は南北線溜池山王駅のホームを介してつながり、さらに千代田線国会議事堂前駅のホームを介して丸ノ内線の国会議事堂前駅に至るという構造。ゆえに、南北線と千代田線の乗換は便利だが、それ以外の丸ノ内線と南北線、銀座線と千代田線の乗換となると南北線ホームを延々と歩く羽目になる。永田町駅と赤坂見附駅も半蔵門線永田町駅が両駅をつないでいる構造で、赤坂見附側から永田町の有楽町線・南北線に乗り換えようとすると、半蔵門線の長いホームを介さねばならない。慣れないと分からない、東京の交通網の関門の一つだ。

大手町や新宿で乗り換えると大変! 逆に穴場の乗換駅たち

地下鉄が網の目をなしている都心では、同じ路線が複数の駅で交差している。ところが、駅によって乗換距離の差が著しい。「どの駅で乗り換えるか」の選択を間違えるだけでストレスがたまってしまいかねない。そんな駅の例を挙げてみる。

丸ノ内線・都営新宿線(新宿駅・新宿三丁目駅)

丸ノ内線と都営新宿線はどちらも新宿ターミナルに乗り入れているが、新宿線は甲州街道の下、丸ノ内線は新宿大ガードのやや南と離れている。両線は1駅東側の新宿三丁目駅で乗り換えた方が、新宿駅の広いコンコースを歩く必要がない。

東西線・半蔵門線(大手町駅・九段下駅)

東西線と半蔵門線は九段下駅と大手町駅で乗換可能だが、利便性は雲泥の差。九段下駅では東西線ホームの下に半蔵門線がクロスしていて2層を上り下りするだけで済むが、大手町駅では5分ほど乗換時間がかかる。九段下と大手町はどちらの線を使っても5分弱で移動でき、大手町で乗り換える積極的なメリットは薄い。

千代田線・日比谷線(霞ヶ関駅・日比谷駅)

霞ヶ関駅と日比谷駅という、隣接する2駅で乗換が可能だが、日比谷では両線のホームが直接通路でつながっているが、霞ヶ関ではコンコースを経由しないと乗換できない。どちらを使っても隣同士の駅で、日比谷駅での乗換の方が圧倒的に便利になる。

銀座線・日比谷線(上野駅・銀座駅・虎ノ門/虎ノ門ヒルズ駅)

銀座線と日比谷線の乗換が最も便利なのは銀座駅だが、他の2駅では改札外乗換になる。特に銀座線虎ノ門駅と、20年開業の日比谷線虎ノ門ヒルズ駅は、両駅から虎ノ門ヒルズへの連絡通路を介してつながっている状態で、虎ノ門ヒルズ駅がまだ工事途上であることも分かりにくさに拍車をかけている。

半蔵門線・都営新宿線・都営三田線(九段下駅・神保町駅・大手町駅)

九段下・神保町・森下の3駅で乗換が可能なのが半蔵門線と都営新宿線。九段下と神保町は隣接しているが、両線が並行していて改札を通らず乗換可能な九段下に対し、神保町では新宿線ホームの下にコンコースを挟んで半蔵門線ホームがある。その神保町には三田線も乗り入れており、半蔵門線と三田線の乗換もこちらが容易。大手町では両線のホームは千代田線や東西線の駅の上にある通路を長々と歩かねば行き来できない。

南北線・有楽町線(飯田橋駅・市ヶ谷駅・永田町駅)

飯田橋から永田町まで、近い区域を並行するように走る南北線と有楽町線は、飯田橋駅での乗換距離が最も短い。市ヶ谷~永田町は両線は別のエリアを通り、永田町での乗換距離が最も遠い。

都営大江戸線・JR山手線・総武線各駅停車(新宿駅・代々木駅)

地下鉄と地上の路線の乗換であるが、巨大ターミナルの新宿駅よりも代々木駅の方が、大江戸線と山手線・総武線の乗換は容易。代々木駅であれば、新宿の広さに迷う心配がない。

これらは一例だが、電車に乗る前に乗換のハードさをどう見分けるか。参考になるのが都営地下鉄の路線図で、東京メトロも含めた12路線全駅の位置を視覚的にわかりやすく見せている。前出の蔵前駅ほか地上乗換が必要な駅には「※地上乗換」とただし書きがあり、駅名が違う乗換駅にも対応。ホーム同士の関係をそれなりに反映している。かつては東京メトロも乗換駅のマップや列車の所要時間を記した『東京メトロナビ』を無料で駅で配布していたが、近年は取りやめている。ガイドブックが必要なくらい、初めての人には難解なのが東京の地下鉄で、「地下鉄なのに地上乗換」「1駅違うだけで不便な乗換」もそれを象徴しているようだ。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム

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