「あしなが育英会」奨学金の資金が不足 高校入学前の県内申請、6割が不採用に

大学生や高校生が協力を呼びかけた募金活動=山形市・JR山形駅

 病気などで親を亡くした生徒や学生を支える「あしなが育英会」(東京、玉井義臣会長)の、奨学金に充てる資金が不足している。新型コロナウイルス禍や物価高などで、奨学金の申請数は急増しているが、県内では今年、資金不足で高校入学前の申請の6割が不採用となった。同会は20日、山形市内で奨学生らが募金活動を展開し、担当者は「奨学金は子どもたちの希望の光。協力してほしい」と呼びかけている。

 同会によると、高校進学前の奨学金申請が特に増加しているという。全国で、2022年度の申請者は1215人だったが、23年度は1328人と百人以上増えている。ただ入学後の申請者を含めた2629人のうち、半数以上の1461人に援助できなかったという。本年度、現段階の申請者は過去最多の1800人で、奨学金を求める学生や生徒は多くなっている。県内の23年度の申請者は14人で、奨学金を得られたのは7割の10人。24年度は7人増え21人が申し込んだが、4割ほどの8人のみの採用となった。

 コロナ禍での失業や収入減などで家計は厳しさを増し、ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の変化による近年の物価高が追い打ちをかけている。同会の奨学金は一部返済が必要だったが23年度からは返済義務のない給付型となった。家計の厳しさに加え、従来より活用しやすくなったことも申請が増えている要因とみられる。

 コロナ禍は資金集めにも大きく影響している。遺産を寄贈する「遺贈」など原資は寄付がほとんどで、街頭募金は1割にも満たないが、資金を寄せてもらうための啓発や広報の効果は大きいという。コロナ禍の間は、街頭での募金ができなくなり、担当者は寄付の減少にもつながっているとみている。資金は昨年2月末現在で55億4千万円だったが、今年の同時期では6億3千万円減少している。遺贈も今年は昨年に比べ2割近く減っている。

 春の募金活動は本県を含む全国各地で20日から始まっており、同会への寄付はオンラインでも受け付けている。

学生が呼びかけ「遺児たちを支援して」

 あしなが育英会の学生募金活動は20日、山形市のJR山形駅東西自由通路で始まった。高校生や大学生の7人が通りがかった人たちに支援を訴えた。

 「金銭面で苦しい境遇にある遺児への支援に協力してください」と呼びかけた。同会の奨学金で東北芸術工科大に進学した、芸術学部4年太田元気さん(21)は「大学進学が当たり前のような社会だが、選択肢が限られ、夢を諦める子どもがいることを知ってほしい」と話した。

 きょう21日の他、27、28の両日も正午~午後6時、同駅で募金活動を展開する。寄付金は全額同会に寄託。国内の遺児とアフリカの遺児の支援に充てられる。

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