少雪の県内、クマ出没早く 山菜採りの季節、人身被害への警戒十分に

 県内のクマの出没時期が例年より早い。目撃件数が過去最多だった2020年は1~3月で9件だったが、今年の同期比では1件上回った。クマの生態に詳しい専門家は、近年個体数が増加しているイノシシ、ニホンジカに餌場を奪われたクマが、里山に降りてくる可能性を指摘する。クマは指定管理鳥獣に追加されたばかり。山菜採りの季節に入り、県は人への被害に警戒を強めるとともに、生態を踏まえた効果的な対策を探る。

 クマの目撃は例年5月から増加する傾向にあるが、今月7日までに既に13件の出没情報が寄せられた。19日には天童市下荻野戸の民家敷地内で、クマ1頭が座っていたという。14日には山形市蔵王上野と上山市金瓶の近接地で相次いで、クマ1頭ずつが見つかった。

 795件と目撃件数が過去最も多かった2020年も今年同様少雪の年だった。クマは雪が少なく気温が高いと、冬眠から明けるのも早くなるという。

 餌場を確保できなかった個体が人里に現れるケースが想定される。岩手大農学部の山内貴義准教授は近年の生態調査から、群れや子連れの集団で行動するイノシシやニホンジカが餌場を占領し、競争に敗れたクマが里山に依存しているのではないかと考察する。

 県レッドリストで絶滅種とされたイノシシやニホンジカは、急速な個体数増加と生息地拡大により、18年度に除外された。ともにクマより繁殖能力が高く、指定管理鳥獣に指定されている。

 また、クマの餌となるブナの実の豊凶も、人里への出没数を大きく左右する。不作だった昨年に人里に下りて餌があることに味をしめ、今年も再訪する危険性があるという。

 山内准教授によると、冬眠明けのクマは体力がなく、活動的ではないという。しかし、レジャーシーズンは始まっており、山に立ち入る際は十分な警戒が必要だ。昨年、クマによる人身被害は5月に初めて小国町で発生し、ゼンマイ採り中の男性が右腕をかまれ大けがをした。

 県は、各課と県警の担当者による対策会議の開催時期を例年より早めて25日に開き、市街地に出没した場合の対応策などを共有することにしている。

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