「今昔物語集」などにあるカニの恩返しの説話で知られる京都府木津川市の蟹満寺で、蟹供養放生会が営まれた。カニを扱う飲食店の関係者や住民らが、150匹のサワガニを放流して感謝の思いをささげ、家内安全や能登半島地震の被災地復興を祈願した。
説話では、農家の娘に助けられたカニが恩返しにヘビを退治し、死んだカニとヘビを弔った観音堂が寺の起源とされ、満ち満ちたカニに災難を救われたことから「蟹満寺」と呼ばれるようになったという。
放生会では修験者が吹くホラ貝が境内に響き、毛ガニやマツバガニが供えられた蟹供養塔前で中野泰倫住職らが読経し、参拝者が手水(ちょうず)鉢にサワガニを放って手を合わせた。
中野住職は「生き物の命をいただいていることに感謝するひとときを過ごしてもらえたら」と話した。サワガニは鉢から出て近くの川へ向かって行った。