欧州帰り29歳で迎えた“Jリーグデビュー戦”でファンウェルメスケルケン際が示した真骨頂とは?オランダで磨いた能力と試合後の印象深き姿

[J1第9節]川崎 0-0 東京V/4月20日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

J1の9節で東京Vとホームで対戦した川崎において、念願の“Jリーグデビュー”を飾った男がいた。今季、オランダのNECから加入したDFファンウェルメスケルケン際だ。

甲府のアカデミーで育ち、オランダのドルトレヒトでプロデビューを飾り、その後もズウォレなどオランダで長らくプレー。29歳で今季、初のJリーグ挑戦を選択していた。

1月末の沖縄キャンプでチームに合流したファンウェルメスケルケンは、リーグ開幕直前の神戸との富士フイルムスーパーカップ(○1-0)で右SBとして先発し、決勝弾を奪うインパクト十分の“川崎デビュー”を飾ったが、その後はなかなか出場機会に恵まれなかった。

それでも9節の東京V戦でついに嬉しい“Jリーグデビュー”を飾ったのである。この日、任されたのは左SB。チームは4-4-2でスタートしつつ、前半途中に4-2-3-1に布陣を変更したなか、左サイドで高い位置を取るなど、攻撃をサポート。

特に光ったのがボールの持ち運びで、相手DFふたりの間をドリブルで突破するシーンを見せるなど、対面の敵を“剥がす”プレーは効果的だったと言える。

その点において本人は「オニさん(鬼木達監督)が『運んで良い』とコーチングで言ってくれましたし、海外で(SBは)ハメどころになるので、そこをかわして上がっていくというのは結構よくやっていました。その感覚が少し戻ってきたかなと」と頼もしい言葉で振り返ってくれた。

【動画】川崎×東京Vハイライト

試合は川崎として12年ぶりとなる4戦連続無得点となるスコアレスドローで終わり、2勝2分5敗の16位、降格圏とは勝点2差と、チームは苦しい戦いが続く。

それでも背中を押すように、試合後も多くの声援を送ったサポーターへ丁寧に手を振って感謝を示すファンウェルメスケルケンの姿も実に印象的だった。彼の目に初めてプレーした等々力の雰囲気はどう映ったのか。

「厳しい、苦しいなかでも、しっかり応援してくれる、ポジティブな声をかけてくれるといのは、なかなかないと思うので、そういった部分を含め、選手たちの力になっていますし、結果を出したい想いを含めて、多くのサポーターが駆けつけてくれた感謝をああいう形で示させてもらいました」

明るい性格でサポーターやメディアへの対応も実に親切で、非常に好感の持てる選手である。まだ1試合のパフォーマンスで評価するのは難しいが、彼が苦しむ川崎の新たな力になる予感が漂うゲームでもあった。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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