『6秒間の軌跡』続編は“恋愛”も正面から描く予感 宮本茉由演じるふみかの正体も明らかに

「花火を舐めるな! 俺は花火師だ!」

花火師の世界に土足で踏み込んでくるマスコミを電話で一蹴した星太郎(高橋一生)。そこにタイミングよく現れたのが、星太郎に弟子入り志願&プロポーズした謎の女性・野口ふみか(宮本茉由)だ。星太郎の花火に対する愛の告白に感動したふみかは彼への想いをより強固にする。『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』(テレビ朝日系)第2話では、そんな彼女の情熱が星太郎の心に波風を立てた。

望月煙火店にしか出せない花火の“紅”に惚れ込んだというふみか。素人とは思えない目の付け所に驚いた航(橋爪功)は、野口という苗字から彼女の正体に気づく。ふみかは30年以上前に航が面倒を見ていた野口煙火店の息子、通称“ぐっちょ”の娘。つまり、花火師の娘で、星太郎も記憶にはないが幼少期に会っていた。

航の名探偵ばりの推理に聞き入る星太郎とひかり(本田翼)。ちなみに、ふみかには幽霊である航の姿も声も認識できておらず、彼女からしてみればただ無言の時間が続いているという状況が面白い。まるで星太郎とひかりが脳内で会話しているように見えたふみかは、二人が付き合っていると勘違いする。まあ、それを差し置いても若い男女(といっても年の差はあるが)が一つ屋根の下で暮らしていたら、そう思うのが自然なのかもしれない。

ただ元妻・理代子(原田美枝子)と離婚してからも関係が続いていた情熱的でロマンチストな航とは対照的に、息子である星太郎には過去に4年間付き合った元カノの由紀子(安藤聖)と別れて以降、浮いた話は一切ない。ひかりが家に来たばかりの頃は星太郎も心中穏やかでない様子を見せていたが、そんな彼女との暮らしぶりもすっかり板についてきた。

ドキドキとかムラムラとか、そういったスイッチを完全オフにして過ごしている星太郎。だが、それは彼なりの配慮であり防御反応なのだろう。母親がいない寂しさをずっと航に見せないようにしてきたのと同じく、自分の感情に蓋をすることで平穏な日々を守ってきたのだ。

その涙ぐましい努力の結果、星太郎は面倒事を回避する癖がついてしまった。ふみかのことも気になりつつ、野口煙火店から送り込まれたスパイを疑い、不採用を突きつける星太郎。すると、ふみかは花火師の娘として生まれ、花火師になりたい夢を持ちながらも父親から女性であることを理由に反対されていることを明かす。代わりにお見合いを進められているが、どんな男性よりふみかを夢中にさせたのは星太郎がつくる花火だった。

そんなふみかの思いに、星太郎の花火師としての心が疼く。それでもまだ動き出せない星太郎の姿にもどかしさを隠せないのがひかりだ。このままではいけないと思いながらも、元カレとくっついては離れるを繰り返していた頃の自分と今の星太郎が重なった彼女は「自分の気持ち、うやむやにしてると自分のことがわかんなくなっちゃいますよ」と星太郎に喝を入れる。

望月煙火店を継ぐかどうかにしてもそうだ。星太郎が悶々と考えているのは、自分が“どうしたいか”よりも、航が“どうしてほしいか”ばかり。そんな星太郎にかける「俺が望んでるから継ぐってんなら、継がなくたっていい。継いでほしくない」という航の言葉には、父であり花火師の師匠でもある彼の厳しさが宿る。けれど、航は自分が星太郎を他人軸に育ててしまったことに気づいているし、同時にそれが息子の美点であることも分かっているのだろう。星太郎は周囲の面倒事に巻き込まれて、人一倍回り道はするけれど、最後には必ず自分の答えに辿り着く。自分がどうしたいかをはっきり分かっているふみかも、きっと星太郎に良い影響を与えてくれる。そう確信する航に諭され、星太郎はふみかを従業員として雇ってみることにした。

「航さんに聞いてみよう」と題した橋爪功のお悩み相談コーナーも今回から復活し、本格的に幕を開けた続編。星太郎は望月煙火店を継ぐのか、継がないのか。ひかりとふみか、まさに両手に花の状況で彼の恋愛スイッチは入るのか。

(文=苫とり子)

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