試合直後には守備対応の確認。苦しい状況が続く川崎でクローズアップされにくい一歩ずつの積み重ね

[J1第9節]川崎 0-0 東京V/4月20日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

東京Vとホームで引き分け、12年ぶりの4試合連続無得点、2勝2分5敗の16位と、今の川崎には何かとネガティブな話題が付きまとう。

ここ数年で多くの主力選手が抜け、軸がぐらついているだけに、正直、苦しい時期を迎えていると言わざるを得ない。

ただ一方で、本当に少しずつではあるが、新時代の“芽”が見え始めている部分もある。

今季、開幕時は点も取れるが失点も重なる大味な試合が続き、鬼木達監督は守備面の引き締めに力を入れた。ただ、攻撃的スタンスを持ち続けながらの調整を前提にしていたが、4-3-3からバランス型の4-2-3-1へ布陣を変えたチームは、失点が減った分、点も取れなくなるジレンマを抱えている。

その辺りで攻撃のイメージの共有、相手を見て柔軟に攻めるための“技術”と“目”の強化、後方からの攻撃ルートの確保と、やるべきことは非常に多いが、守備面では確実に積み上がっている部分もある。

実際に今季は昨季の最終ラインからムードメーカーであり、声で周囲を上手くコントロールできる登里享平、「失点するということはどこかに緩みがある」と、周囲を叱咤激励していた山根視来の両SB、そしてCBとしていぶし銀の働きを見せていた山村和也が移籍。さらに1年前には絶対的なリーダーであった谷口彰悟も海外挑戦をしている。

加えて頼りのCBジェジエウは復帰しては怪我を繰り返すスパイラルにハマっており、新戦力の左SB三浦颯太、CB丸山祐市らも戦線離脱と、苦しい台所事情を強いられている面がまずはある。

【動画】川崎×東京Vハイライト

もっともその状況で、70分の失点で0-1で敗れた前節(8節)のC大阪の試合直後のロッカールームでは、CBコンビの佐々木旭、大南拓磨らが中心となって失点シーンの対応方法を確認。そうしたディスカッションが増えている背景もある。

「あの時間でもラインをしっかり上げること。そこはしっかり確認し合えました。(右サイドからのクロスをファーサイドで決められたC大阪戦の失点シーンに対して左SBの橘田)健人くんは『付いていかなくちゃいけなかった』と振り返っていました」

こうした佐々木の言葉通り、守備面はチームで対応法を議論しながら、やり方を整理できつつあるというのだ。

それは東京V戦での最終盤でも表われた。

細かいシチュエーションは異なる。それでもC大阪戦と同じように右サイドからクロスを入れられたシーン、中途半な最終ラインの裏を取られたわけではなく、ファーサイドにいた相手に決められたかと思った瞬間、防いだのが試合途中にボランチから左SBに回っていた橘田だった。

橘田は述懐する。

「本当に(C大阪戦の失点と)似たようなシーンだったので、しっかり集中して食らいつけて良かったです。(咄嗟だったので)どんな形でクリアできたか分からなかったですが、(C大阪戦の反省を)生かせて良かったです。自分は高さでは勝てないので、なんとか身体をつけて、最後に触るところが大事だと思います」

一方で橘田は守備面でもまだ積み上げが必要だとも語る。

「ピッチ内で良くしていくために、お互い言い合いながらプレーできていると思うので、そういう意味で今日はゼロで抑えられたことは良かったです。ただピンチも多くありましたし、改めて練習から話し合って、細かいところにこだわってやっていきたいです。もっとチームとして上手く守るところは必要かなと。長いシーズンを戦っていくうえではもっとやっていく必要があると感じます」

今季はリーグの開幕前にACLのラウンド16が控え、急ピッチでチーム作りを進めてきたエクスキューズはあるが、不甲斐ない成績であるのは間違いなく、クラブとしてさらなる奮起が求められる。それでもネガティブな面ばかりがクローズアップされる現状で、本当に一歩ずつではあるが、前進している面があることも理解しておくべきだろう。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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