水原容疑者が「最大の盾だった」 消えて感じる存在感、大谷翔平に直接話しかけた米メディアの驚き

ドジャースの大谷翔平【写真:ロイター】

取材中の大谷から通訳が離れていった…これまでなかった光景

米大リーグ、ドジャースの大谷翔平投手を取り巻く環境は、シーズン開始早々に激変した。開幕戦が行われた3月20日の夜に、長年専属通訳を務めた水原一平容疑者が、巨額の違法賭博への関与で解雇され、現在は銀行詐欺罪で訴追されている。グラウンドでは、大谷のそばに常に通訳がいる状況ではなくなった。この変化を米国のメディアは様々な視点から分析している。

米スポーツ専門局「FOXスポーツ」が「ショウヘイ・オオタニがギャンブルの物語からいかにドジャースの一員として、そして個人として成長できるか」という記事で伝えている。

記事はドジャースのクラブハウスで起こった異変を伝えている。大谷が米国での開幕戦後にインタビューを受けていた時、途中で新たに通訳を務めるウィル・アイアトン氏が離れていったというのだ。記事は「アイアトンが、このスラッガーの回答を短いインタビューの間ずっと訳していたが、その後想像できないことをした」「オオタニの通訳が去っていったのだ」と、メディアに与えた驚きを伝えている。

アイアトン氏はかつて前田健太投手の通訳を務めたものの、現在はチームのデータ分析を担当している。記事は「29歳のオオタニは、事実上自立していた」として、大谷にとっては“初”となる環境をつづった。

「最近、イッペイ・ミズハラがいた場所には空白がある。その空白は、オオタニの同僚、コーチ、アイアトン、報道陣、トレーナー、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督といった登場人物で埋められている。その空白は他の人たち(もちろん、オオタニの金を盗まない極悪じゃない人たち)にとって隙間を埋めるチャンスだ」

これまで、常に水原容疑者を介してのコミュニケーションを強いられていた大谷周辺の人たちが、距離を詰められる状況にあるというのだ。

報道陣にしゃべってこなかったのは英語力が原因ではない?

一方で、通訳抜きのコミュニケーションが日常的になれば、大谷にも変化が起こると予測している。「その空白はオオタニにとって成長するチャンスであり、手を広げるチャンスであり、もしかすると自分の人生の主導権をより握るチャンスかもしれない」とした。

記事は、水原容疑者が大谷周辺の状況を制御しすぎていたとみている。実際に銀行詐欺罪で訴追された際の訴状には、大谷の銀行口座にアクセスしたいという代理人や会計士からの希望をはねつけたことや、銀行からの問い合わせを大谷本人を装って騙した状況が赤裸々につづられている。

「オオタニの通訳として仕え、親友のように振舞っていた数年間、ミズハラはあまりにコントロールしすぎていたと、今私たちは理解している」「このスキャンダルはオオタニが自分の資金管理についていかに考えが甘かったかに光を当て、彼の人生がいかに管理されていたか問題提起した」

そして、メディアと大谷がコミュニケーションを図る上でも「ミズハラがまるでオオタニとメディア間の最大の盾でもあったと分かってきた」というのだ。

ソウルでの開幕戦を最後に水原容疑者がチームを離れてからの数日間、メディアにとっては大谷に接触しやすい状況が生まれたのだという。「ミズハラを通して質問するのではなく、報道陣はオオタニのもとに直接行き、話す時間があるか彼に尋ねた。そして驚くべきことに、彼は『もちろん。何が必要ですか?』と言った」。

大谷はこれまで取材にあまり応じてこなかったが、それは英語力の不足が原因ではないと見ているようだ。昨年12月にはニューヨークで行われた全米野球記者協会の夕食会で、2分間に及ぶ英語スピーチをこなしている。

通訳が常にそばにいる状況でなくても「短い期間、彼は不完全な英語でインタビューを実施し、ミズハラやアイアトンが側にいない中で全力を尽くした」。ただそれはある日突然終わり、メディアは大谷と簡単にコミュニケーションをとれなくなっているのが現状だという。

THE ANSWER編集部

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