【中国】乗用車の新エネ車率5割超え[車両] 内燃機関車が少数派の時代到来

中国の自動車業界団体によると、4月1~14日に販売された乗用車に新エネルギー車(NEV)が占める比率は50%を超えた。統計対象の期間を問わず、NEVの比率が50%を超えるのは初めてとみられる。中国乗用車市場でNEVがマジョリティーに、内燃機関車(ICE車)がマイノリティーになった格好。政府は商用車も含めたNEV比率を2030年までに50%超にするとの目標を掲げているが、同目標は政府見通しより大幅に早く達成される見通しだ。

「新エネルギー車(NEV)」は、中国政府がつくりだした電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などを指す概念。中国では、自動車はNEVとICE車に大別される。厳密にはPHVも内燃機関を搭載しているが、多くの場合、ICE車に分類されることはない。

中国自動車業界団体の全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)が発表した4月1~14日の乗用車販売統計によると、同期の乗用車の小売販売台数は51万6,000台。このうちNEVは26万台で、NEVの比率は50.4%となった。卸売販売台数のNEV比率も50.2%を記録した。

一部大都市のNEV比率はこれまでも50%を超えていたが、4月前半は国内全体でもついに50%を超えた。一部大都市は大気汚染防止などを目的にICE車の購入・使用規制を敷いており、NEV比率が伸びやすい状況にある。

■昨年通年から約15ポイント上昇

過去の小売販売台数のNEV比率を見ると、19年が4.9%、20年が5.8%。21年以降は前年比10ポイント前後の大幅な上昇が続き、23年は35.7%となっていた。24年3月は41.5%。

中国自動車工業協会によると、商用車を含めた自動車販売全体でのNEV比率は23年が31.6%、24年3月が32.8%だった。乗用車のNEV比率よりは低い水準。商用車のNEV普及が乗用車より遅れているためだ。

ただ、商用車を含めたNEV比率も早晩50%を超える見通し。中国NEV最大手の比亜迪(BYD)の王伝福董事長は2月、比率50%を超える月が今年中に出てくるとの予測を示していた。

中国政府は22年に、商用車を含めたNEV比率を30年までに50%超にするとの目標を掲げた。現在の状況を見る限り、30年よりはるかに早く50%を超えることが確実だ。

■買い替え促進策が追い風

政府による自動車の買い替え促進が、4月に入ってからの乗用車販売のNEV比率を押し上げている。

中央政府は今年に入り耐久消費財の買い替えを促すことで景気の下支えを図る方針をたびたび表明。足元では各地方政府が乗用車の買い替えに補助金を出す措置を打ち出している。乗用車買い替え促進策の基本的な対象はNEVで、消費者がICE車よりNEVを選好する動きがますます強まっている。

NEVメーカーが足元で値下げキャンペーンを積極化していることも比率の押し上げに寄与。NEV業界はメーカーが乱立している状態で、各社は生き残りをかけて利幅を削ってでもシェアを伸ばそうとしている。

■中国勢による市場支配は不可避か

NEVがマジョリティーになることは、NEV市場を制すブランドが中国自動車市場を制すことを意味する。

こうした状況は中国ブランド車に有利に働く。中国勢は外国勢より早くNEVシフトに注力しており、中国NEV市場で既に圧倒的なシェアを誇っている。

CPCAが発表した23年のNEV乗用車販売シェア(台数ベース)では、中国ブランド車のシェアが84.6%に達した。一方、外国ブランド車は米系ブランド車が8.8%、ドイツ系ブランド車が5.1%、日系ブランド車が1.1%となった。

23年の各国ブランドのNEV乗用車販売台数を見ると、日系が68.8%増、米系が37.5%増と巻き返しの兆しをみせている。だが、中国ブランド車が圧倒的なシェアを握りデファクトスタンダードを築きつつある中での戦いは容易でなく、外国ブランド車を取り巻く状況は険しくなっている。

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