【社説】天神大牟田線100年 沿線の魅力高めて共栄を

西日本鉄道(福岡市)の天神大牟田線が今月、開業から100年の節目を迎えた。

福岡都市圏から福岡県南部に至る地域の大動脈として、沿線とともに発展を遂げた。次の100年も地域と手を携え、まちづくり、観光や経済の活性化に貢献してほしい。

西鉄の前身の一つである九州鉄道が1924年、福岡市・天神から久留米まで開業したのが天神大牟田線の始まりだ。39年に炭鉱で栄えた大牟田まで延伸した。現在は福岡(天神)-大牟田間を約1時間で結ぶ。

西鉄によると、記録が残る45年度以降、延べ約72億人を運んだ。住宅開発で沿線の人口が増えるにつれ、輸送力を高めていった。

近年は人口減少の影響もあり、利用客数は漸減傾向が続く。ピークは92年度の約1億2789万人で、2022年度は約8484万人だった。新型コロナウイルス禍前の9割程度まで回復したが、今後も減少が見込まれる。

利用客は天神方面に向かう通勤・通学客に偏り、人口減が著しい久留米以南の収支は厳しい。新たな需要を喚起しなくてはならない。

西鉄はさまざまな手を打ってきた。特に観光利用の増加に力を入れる。

19年に運行を始めた観光列車「ザ・レールキッチン・チクゴ」は代表例だ。車内はレストラン仕様で、車窓の風景を眺めながら地元の食材を使った料理が味わえる。沿線以外でもPRに努める。

太宰府をはじめ、観光拠点では駅舎を改装した。15年に一新した柳川駅では県や市と協力し、駅前に掘割を引き込み、観光名物・川下りの乗下船場や交流施設を設ける事業を進めている。

新たに整備する列車や駅は外国人客も利用しやすい案内設備が必要だ。

福岡都市圏で1960年代から段階的に進めてきた連続立体交差事業は、最後の雑餉隈(福岡市博多区)-下大利(大野城市)間の工事がほぼ完了した。

まちづくりへの波及効果は大きい。踏切待ちの渋滞が解消されるだけでなく、線路で分断されていた地域の一体性を高め、人の流れを創出するきっかけになるからだ。

西鉄は高架下に商業施設やスポーツ施設、託児所などを設置する構想を描く。魅力ある空間を形成するためにも、地元住民や自治体と協調を欠いてはならない。

駅の高架化に合わせ、バスやタクシーへの乗り継ぎのしやすさ、自転車やバイクの止めやすさも高めたい。

天神大牟田線100年の歴史は天神の発展と軌を一にする。西鉄は天神のまちづくりに尽力してきた。これからもその役割に期待する。

5月には福岡市東部と新宮町を走る西鉄貝塚線も開業100年になる。どちらも福岡の生活や経済を支える重要な鉄道だ。利便性と安全性の向上に一層努めてもらいたい。

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