海越えて雲上に人波 アルペンルート全線開通1週間

「雪の大谷」を満喫する大勢の訪日客=15日、立山黒部アルペンルート

  ●円安、コロナ明け追い風 アジアに加え、欧米客増加

  ●ホテル、山小屋もにぎわい

 22日に全線開通から1週間となる立山黒部アルペンルートで、インバウンド(訪日客)が例年以上に増えている。従来の台湾、韓国などアジアのツアー客だけでなく、コロナ禍の収束や円安を追い風に欧米の個人客も目立つ。運営する立山黒部貫光(富山市)は「前年比1割以上の増加は確実」とみており、ホテルなど観光関係者は人波の持続に期待を込める。

 20日夕、アルペンルートの富山県側の玄関口である立山駅は、「雲上の楽園」を満喫してきた訪日客であふれていた。38人が参加するマレーシアの団体ツアー客はケーブルカーで駅に到着後、土産店で買い物を楽しみ、宿泊先の金沢市へバスで向かった。

 立山黒部貫光の志鷹朗運輸事業部長は多言語が飛び交う駅構内を見渡し、「訪日客の増加は確実。前年の10%以上は増えている」と手応えをみせた。ケーブルカーの運行本数は通常の20分間隔から10分間隔に増やした。高原バスも40分おきから随時運行に変更して輸送能力ぎりぎりのラインで稼働しているという。

 志鷹部長は「個人向けの事前予約は6割が海外からで訪日客はコロナ前の水準に戻った。これが夏、秋まで続いてほしい」と通年でのにぎわいの継続を願った。

 個人客では、欧米からの来訪が目立つという。富山市のANAクラウンプラザホテル富山の担当者は、訪日客全体が前年に比べ増加しているとし、「特に米国や欧州各国からの旅行者が増えてきた」と変化を口にした。

 室堂にある山小屋には、台湾や中国のほか欧州からも登山、スキーなどを目的とした客が集まる。雷鳥荘の林守人代表は「前年に続いて入り込みは順調だ。コロナ禍からの復活を感じている」と話した。

 立山駅近くのホテルテトラリゾート立山国際は全線開通後、韓国やインドネシア、シンガポールなどからの海外ツアー客で客室は連日フル稼働の状態だ。訪日客数は前年比30%増で、ホテル責任者の松原和徳さんは「客は今までのように富裕層ばかりではない。円安の影響が大きいのではないか」と推測した。

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