歌手・小山雄大さん「きんぴらごぼう」の思い出「女手一つで育てられ山ほど食べた」

歌手の小山雄大さん(C)日刊ゲンダイ

【私のおふくろメシ】

小山雄大(歌手・21歳)

歌手・三山ひろしの弟分にして、童顔の風貌から「全国民の孫」のキャッチフレーズで今月、「道南恋しや」でデビューした小山雄大君。母親の女手一つで育てられ、「いつか親孝行したい」が口癖だ。故郷の北海道時代からずっと食べ続けているきんぴらごぼうが一番の味だ。

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札幌近郊の手稲で生まれ育ち、母親とずっと2人暮らしでした。小学生の時は母親が仕事帰りに児童会館に迎えに来てくれて、いつも一緒に家に帰っていました。

おじいちゃん、おばあちゃんが近くの登別にいたので小学校の頃は夏休みや冬休みになると、一人で遊びにいっていました。2、3歳の頃、お母さんがアンパンマンとか仮面ライダーの曲を僕に聞かせたらしいんですけど、その頃は「きよしのズンドコ節」が一番好きでした。氷川さんがテレビに出ると「きよし! きよし!」と叫んで喜んでいる映像が今でも残っています。

4歳の頃に奥尻島のお祭りに行きました。その時、初めて三味線の音を聴いて「いいなあ」と思ったみたいです。僕はやりたかったけど、まだ体が小さくて三味線を持てない。それなら民謡からというので教室に通うことになり、三味線は小学2年から習いました。

そうしているうちに氷川さんが好きで夢は演歌歌手になることだったと気がつくんです。三味線、民謡を習ったこともムダじゃないし……。

■NHK「のど自慢」のグランドチャンピオン

2016年に「NHKのど自慢」に出場して、グランドチャンピオンになりました。中学1年から作曲家の弦哲也先生に教えていただくようになり、北海道から2カ月に1度、日帰りで東京にレッスンに通い、高校入学と同時に上京します。卒業する頃にデビューに向けて本格的にオーディションを受け始め、レコード会社も決まりました。去年8月に弦先生から松前ひろ子先生を紹介していただき、松前先生のところに所属することになりました。三山(ひろし)さんが事務所の先輩です。

三山さんは紅白歌合戦でも披露しているようにけん玉の名人。僕はといえば、特技がトランプのマジック。小学5年の時にやるようになり、高校から本格的に練習するようになりました。ユーチューブの手品を何百回も見ながら覚えて。趣味のつもりで始めたマジックですが、思いがけず、特技として紹介していただけて僕の強みにできたらうれしいです(笑)。

デビューが決まった時はうれしくて母親に電話しました。「小さい頃から夢を諦めないでよかったね。これから応援してくれた皆さんのために頑張らないと」と喜んでくれた。デビュー曲の「道南恋しや」は2年前にいただいた曲で、ずっと練習していました。いただいた際に詞をかいてくださった、さわだすずこ先生が伴奏して歌ってくださった時のことは忘れられません。北海道から出てきて夢を掴むまでは帰れないという歌詞が僕自身とそのまま重なり、ジーンときてしまいました。

正月にきんぴらとうま煮を詰めて母が上京

一番好きな食べ物は小さい頃からずっと「きんぴらごぼう」です。母親の料理ですが、おばあちゃんの味でもあるんです。

とくに年末年始は母親がたくさん作ってくれます。うちのきんぴらはごくシンプル。ごぼうとニンジンを細長く切ったものをゴマ油で炒めて、甘辛く味付けするだけ。子供で辛いのがダメだからタカの爪は入れないで、ゴマなんかもかけません。それをひたすら、それこそ山ほど食べていた記憶があります。

お正月はお節もあるけど、母親が作るうま煮が好きです。

東京と違って鶏肉ではなくて豚肉が入っていて、野菜類はレンコン、タケノコ、ナルト、ごぼう、サトイモ、シイタケ、コンニャクかな。

お正月以外だと、豚汁をよく作ってもらいました。朝は味噌汁よりも豚汁の方がテンションが上がるんですよ。豚肉、ニンジン、ごぼう、シラタキ、大根、それから北海道のタマネギ、ジャガイモが入って、最高ですよ。

今年のお正月、母親が東京に出てきた時は、きんぴらごぼうとうま煮を大きいタッパーに入れて持ってきてくれました。東京に居る間に豚汁も作ってくれて、毎日、うれしかったですね。

これからは一生懸命頑張って、ヒットしたら母親を東京に呼んで親孝行したい。それが僕の今の夢です。

(聞き手=浦上優)

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