救急隊の「心肺蘇生中止」運用を開始 姫路市消防、終末期患者の意思を尊重 かかりつけ医の確認は必須

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 兵庫県姫路市消防局は、末期がんや老衰などで人生の最終段階を迎え、延命措置を望まない患者が心肺停止になった際、かかりつけ医から確認できれば心肺蘇生を中止する運用を本年度から始めた。本人の意思を最大限尊重するためで、同県西はりま消防本部と同県赤穂市消防本部も同様の運用を始める。

 全国の消防で同様の取り組みが進んでおり、医師や弁護士らで構成する「中・西播磨地域メディカルコントロール協議会」が指針を作成。同県中西播5市6町のエリアで運用が始まった。

 姫路市消防局によると、2017~21年の5年間で、心肺停止状態の患者の搬送事案は約4800件あったが、うち約160件(約3%)が心肺蘇生を望まない患者だったという。この場合でもこれまでは、救急隊が心臓マッサージなどの延命措置を行い、医療機関へ搬送してきた。

 新しい指針では、事前に患者とかかりつけ医が相談し、意思確認を行う。患者が心肺停止状態となり、救急隊が到着した際には、隊員は心肺蘇生を行いながらかかりつけ医に連絡。確認が取れた段階で隊員は心肺蘇生を中止し、かかりつけ医に引き継ぐ。

 市消防局によるとこれまでに、救急要請をした家族から延命措置を反対され、現場で救急隊が迷うケースもあったという。市消防局の担当者は「もし蘇生中止を望まれる場合は、事前に必ず家族やかかりつけ医とよく相談してほしい」と呼びかけている。(井上 駿)

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