揺らぐ「保守王国・島根」 危機感にじむ自民・岸田総裁 笑顔振りまく立民・泉代表 衆院島根1区補選ラストサンデーで対照的な表情

「政治の信頼回復」を誓う岸田首相㊧と「政治改革の戦いだ」と訴える泉代表

 自民党総裁の岸田文雄首相と立憲民主党の泉健太代表が選挙戦のラストサンデーで同時に現地入りした衆院補欠選挙島根1区。1996年導入の小選挙区制で自民が全勝してきた保守王国は、自民党派閥の裏金事件で揺らぐ。21日、支持拡大に奔走した2人の党首は対照的な表情を見せた。

 「厳しい戦いです」「最後まで支えてください」。自民新人錦織功政氏(55)の応援で島根入りした首相は3カ所での街頭演説後いずれも聴衆に駆け寄り、グータッチを繰り返した。告示前から伝わる「劣勢」を覆したい危機感がにじんだ。

 安来市で臨んだ党員との車座対話では、厳しい批判の声にさらされた。「党員として恥ずかしい気持ちでいっぱい」「かつての保守王国島根はない」―。険しい表情で聞き入った。

 この日は党首自ら組織固めにも努める。演説の合間に県連幹部らが待つ松江市内のホテルに急行。6人の前で裏金事件を陳謝し「負けるわけにはいかないんです」と頭を下げた。

 当初、反発も受けた島根入り。陣営の福田正明選対本部長は「泣いても笑ってもあと6日。一票一票どう上積んでいくか。最後まで力を尽くす」と前を向いた。

 立民は攻勢を強める。泉代表は元職の亀井亜紀子氏(58)の応援演説で、裏金事件を起こした自民の体質を真っ向から追及。「大きな政治改革の戦いだ」と、クリーンな政治の実現を唱えて支持拡大を図った。

 演説中やその後の支持者との握手。笑顔が目立った。安来市の商業施設前では「止められるまで握手を続けますよ」。軽快な足取りで聴衆を回った。

 選対を仕切る立民県連の川井弘光幹事長は「リードしていると言われるが、気を引き締めないといけない」との思いを強めた。「電話作戦などできることをやり尽くす」

 政権の行方を占う戦いも残り6日。演説会場には投票先を迷う有権者も多く駆け付けた。出雲市の首相演説を聴いた同市の60代男性は「長く自民を支持してきたが、今回は決めかねている」。安来市で泉代表の言葉に耳を傾けた同市の会社員石原幸介さん(44)は「企業誘致や人口減少対策の具体策も踏まえて投票先を決めたい」と話した。

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