お墓はもう要らない?ゴールデンウィークの家族会議で話しておきたい「墓じまい」のこと

避けたい無縁墓、増える墓じまい。2022年の改葬件数は過去最高に

もうすぐ大型連休がやってきます。コロナ禍の行動制限がほぼほぼ緩和されたいま、年末年始以来の帰省を計画中という人もいるはず。春のお彼岸にかなわなかったお墓参りをする予定のご家族も多いのではないでしょうか。

年に数回、ゆかりある人々に思いを寄せながら墓前に手を合わせる、そんな大切なひとときに「ウチのお墓、この先どうしよう」と漠然とした不安と迷いが脳裏をかすめる人もいるのでは?

株式会社鎌倉新書が2024年3月12日に公表した「【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」によると、「お墓が遠方にあること」次いで「継承者がいないこと」を理由に墓じまいを検討する人が多いという結果も。

遠方への墓参りのための交通費、長い将来にわたる維持管理費の支払いなどに悩む「墓守り」たち。

少子高齢化が進むいま、介護を担う人や年金制度の支え手と同様、墓守り不足も由々しき問題です。みなさんのまわりにも、墓じまいを検討中という人、いませんか?

今回は、大型連休前にちょっと目を向けておきたい「墓じまいの話」です。

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増える「墓じまい」改葬件数は20年で2倍以上に

「墓じまい」とは、墓石や墓所を撤去して、その使用権を墓地の管理者に返すこと。そのあと、納骨堂や合同墓地、樹木層や散骨などの自然葬といった別の供養に移す「改葬」を含めた一貫の作業を墓じまいと呼ぶケースも。

家族やゆかりのある人たちがお参りしやすい場所にお墓を新しく作ったり、将来的に墓守りがいなくなっても無縁墓にならならない供養先を考えている人も多いでしょう。

2022年の改葬件数は過去最高

【図表1枚目/全2枚】2022年の改葬件数は過去最高に
  • 1998(平成10)年 7万263件
  • 2003(平成15)年 6万8579件
  • 2008(平成20)年7万2483件
  • 2013(平成25)年 8万8397件
  • 2018(平成30)年 11万5384件
  • 2019(令和元) 年12万4346件
  • 2020(令和2)年 11万7772件
  • 2021(令和3)年 11万8975件
  • 2022(令和4)年 15万1076件

2023年10月に厚生労働省が公表した「令和4年度衛生行政報告例」によると、2022年度の全国の改葬件数は過去最高の15万1076件。これは1998(平成10)年の約2倍となる件数です。

やっぱり一番気になるのは「墓じまいっていくらかかるの?」という費用のことですね。次では「墓じまい」に関する意識調査や費用に関する調査結果も追っていきます。気になった人はぜひ続きをどうぞ。

【墓じまい】実施費用は「31万円~70万円」が最多でしたが…。

改葬・墓じまいの実施費用

改葬・墓じまいの実施費用
  • 30万円以下:16.0%
  • 31万円~70万円:24.2%
  • 71万円~110万円:19.5%
  • 111万円~150 万円:15.6%
  • 151万円以上:15.2%
  • わからない:9.4%

墓じまいにかかる費用総額は、移転元や移転先の種類、お墓の引っ越し方法などにより変わります。

ちなみに鎌倉新書の調査で、改葬・墓じまい費用の回答として最も多かったのは「31万円~70万円」の24.2%。しかし、その他の費用帯にも幅広く分布しています。墓地の広さに応じた費用となっていることが推測され、墓石の撤去費用は1平方メートル当たり10万円~15万円前後です。

同調査では墓じまいを検討したけれどもやめた人に対してその理由をたずねていますが、そのトップは「解体費用が高すぎた(26.3%)」でした。

他には「離壇料が高すぎた」という回答も。お墓の移転を寺院に伝えたところ、高額な離壇料を請求されたという相談は、国民生活センターにも寄せられています。

改葬元での撤去費用と、改葬先での納骨費用、この双方をトータルで考えていく必要があるということですね。

墓じまいに必要な手続きをおさらい

墓じまいにともなう「改葬」の流れについても簡単に整理しておきましょう。

改葬手続きは「墓地、埋葬等に関する法律」で定められており、自治体から許可をもらう必要があります。一般的な流れを整理しておきましょう。自治体や墓地の管理母体によって詳細が異なる可能性もありますので、必ず確認してくださいね。

  • 親族や家族の同意を得る
  • 改葬先(墓地、納骨堂など)を決め、受け入れ証明書をもらう
  • 現在の墓の管理者(霊園、寺院など)に連絡し、埋葬証明書を発行してもらう
  • 現在の墓がある自治体に「改葬許可申請書」「埋葬証明書」などを提出→改葬許可証が発行される
  • 遺骨を取り出す
  • 改葬先に遺骨をおさめる

一連の墓じまいにまつわる手続きは、お墓にゆかりのある親族や家族の同意を得てから行いたいものです。地域の習慣や、一族の年長者の方の意見にも耳を傾けながらていねいに進めていく必要があるでしょう。

ちなみに、お墓の維持費の滞納が続き、祭祀継承者や縁故者などと連絡がとれない場合、官報に掲載されるとともに貼り紙、立札で通知が行われます。そして、音沙汰のないまま1年経つと、墓地の管理者が自治体の許可を得たうえで無縁墓の撤去を行えるようになります。

少子化が進むいま、この類の事例が増えていくことは仕方がないことなのかもしれません。でも、自分や自分の家族のお墓が、知らない誰かに「しまわれる」というのは、決して愉快な話ではないでしょう。

ゴールデンウィークの家族会議で「ウチのお墓、将来どうする問題」話してみませんか?

ちなみに2022年9月に全国石製品協同組合(全石協)が公表した調査結果によると、お墓の購入予定者の48.9%が「七回忌まで」「三十三回忌まで」というようにお墓の使用期限をあらかじめ想定していると回答。

将来の墓じまいを意識しながらお墓を買うことがごく自然になる日も、遠くはないのかもしれません。

日ごろわざわざ話題に出すほどの話ではないけれど、いつかしたいと思っていた「ウチのお墓、将来どうする問題」。大型連休に家族や親戚が集まる機会があれば、話題に出してみても良さそうですね。

参考資料

  • 株式会社鎌倉新書「【第3回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」(PR TIMES)2024年3月12日
  • e-GOV法令検索「昭和二十三年厚生省令第二十四号 墓地、埋葬等に関する法律施行規則」
  • 衛生行政報告例/平成10年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/平成15年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/平成20年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/平成25年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/平成30年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/令和元年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/令和2年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/令和3年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 衛生行政報告例/令和4年度衛生行政報告例/統計表/年度報(e-stat)
  • 全石協「これからお墓を購入しようと考えている方の‟お墓の形態”と”お墓の使用期限”についてのアンケート調査」(PR TIMES)2022年9月19日
  • 独立行政法人国民生活センター「墓を引っ越しする」と言ったら、寺から高額な費用を要求された
  • e-GOV法令検索「昭和二十三年法律第四十八号墓地、埋葬等に関する法律」

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