サッカーは「ただ走ればいいってものではない」 名将オシムの金言「考えて走れ」の真意

かつて日本代表の指揮を執ったイビチャ・オシム氏【写真:Getty Images】

元日本代表MF中村憲剛氏と元日本代表DF内田篤人氏が議論

元日本代表MF中村憲剛氏が、スポーツチャンネル「DAZN」の番組「Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME」にゲスト出演。ホストを務める元日本代表DF内田篤人氏とともに、サッカーに求められる「走り」について自身の考えを語った。

現役時代の中村氏と言えば、川崎フロンターレの絶対的な司令塔だった。内田氏は「川崎なんて試合をしていると、無駄走りをしない。中村氏くらいになるともう動かないから」と、対戦した時の印象について語った。

「動かないは言い方が良くない」と笑いながら突っ込んだ中村氏だったが、内田氏は構わずに「動かないポジションに立って、俺らが動かないといけないポジションにいるんです。だから、走行距離も多ければいいっていうものではない。走らされているっていうこともあるから」と、説明を続けた。そして内田氏は「大事なところでスーって上がってきたり、大事なところで動かない。そういうところが質。ただ走ればいいってものではない」と、自身の考えをまとめた。

これを聞いた中村氏は、「自分が止まることで、相手を走らせる。自分たちはボールを走らせる。相手が自分たちにいろんな対応をしてくると穴ができる。その穴にいいタイミングで的確にランニングするっていうイメージで、僕たちはプレーしていた。量と質でいうと、僕自身はより質を求めて、いつ、どこで、どのように走るかはものすごく考えてやっていた」と、J屈指のパスサッカーを体現していた当時の思考を明かした。

中村氏は日本代表でイビチャ・オシム監督に指導も受けている。オシム監督と言えば、「人もボールも動くサッカー」が代名詞だった。オシム氏から学んだことを聞かれた中村氏は「オシムさんは『ただ走るのではなく、考えて走りなさい』って最初のほうによく言っていました。とにかくボールホルダーを越していく。味方が前向きだったら、どんどんどんどんうしろから出ていく。そうすれば相手はついていかないといけないから、『相手にとってリスクだ。おまえが残るほうがこっちにとってリスクだ』と言っていました。だから、みんな次から走るんです。そうすると沸いて出てくるようになる。それに対してオシムさんが『ブラボー!』と言うと、みんなブラボー欲しさに、ギュンギュン行くんです」と、そのチーム作りの一端を説明した。

無駄走りをして「疲れるだけだと覚える」

そして、「当時、僕とかヤットさん(遠藤保仁)とか、俊さん(中村俊輔)とか、あまり走ってなさそうなイメージがあったんですけど、結構、僕らは走っていたんです。そうするとゲームが流れて、人もボールも動いて楽しいサッカーができている感覚がすごくありました。オシムさんの言い方は、自分も指導者としてエッセンスとして(取り入れている)」と、中村氏は元日本代表監督から受けた影響の大きさを語った。

ここまで走りの「質」の重要性を説いていた2人だが、内田氏は「ただ、これを聞いている高校生、中学生は、まず『量』から行ってもいいと思う。年齢もあるけど、僕はサイドバックだったのでどちらかと言うと使われる側。まずは行って覚える。無駄なタイミングと、疲れるだけだっていうことを。とりあえずガムシャラに行けば、『行かない』っていうのは考えればいつでもできるので。だから、『まずは行け!』。そうしたら無駄なところを省いて行って、こうなるから」と、中村氏を指して説明した。

中村氏も「僕も昔は無駄走りをしていました。言っておかないと、昔から走っていなかったみたいでシャクなので」と、内田氏が言うようにまずは量を走ることが重要であると同意していた。(FOOTBALL ZONE編集部)

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