日本の公的年金制度。細かな決まりごとが多く、知っていると知らないでは、大きな差となることも珍しくはありません。今回は「年金を受け取っている人が亡くなった際の手続き」についてみていきます。
毎年6月に日本年金機構から届く「年金振込通知書」
年金受給者であれば、毎年6月、日本年金機構から「年金振込通知書」が届きます。金融機関等の口座振込で年金を受け取っている人に対してハガキで送られてくるもので、6月から翌年4月まで毎回支払われる年金額を知らせるものです。
――なんで6月? 年度始まりの4月に送るべき
そんなことをいう人がたまにいますが、年度始まりの4月分の年金が振り込まれるのが6月。そのため日本年金機構では年金振込通知書を6月に送付しているとしています。
では「年金振込通知書」記載内容を見ていきましょう(画像)。
出所:日本年金機構ホームページより
まず「振込先」。その下には年金を受け取っている人の「基礎年金番号」や年金の種類を示した「年金コード」、「氏名」が書かれています。
その下の4列に区切られた表の中を見ていくと、まず一番上に書かれている「年金支払い額」に記されているのは、原則6月から翌4月分の支払額。ここには天引き前、いわゆる額面が記されています。
次に記されているのは「介護保険料額」、その下に記されているのが65~74歳であれば「国民健康保険料」、75歳以上であれば「後期高齢者医療保険料」。これらは年金から特別徴収(天引き)されます。その下には「所得税額」および「復興特別所得税額」。65歳未満であれば年108万円超、65歳以上であれば年158万円超えが課税対象で、年金から天引きされます。その下に書かれているのは「個人住民税額」。記載されている金額は前年の所得をもとに計算されたもので、こちらも天引きされます。最後に記されているのが「控除後振込額」。社会保険料や税金などを差し引いたもので、実際に口座に振り込まれる金額です。さらにその右隣には「前回(前年)の「控除後振込額」の記載も。大きな変動がないか、必ずチェックを。
また「年金振込通知書」は現在の収入を証明する書類として使用できます。高齢者が収入を証明しなければいけないシーンとして「賃貸物件の契約」「老人ホームへの入居」などがあります。
――えっ、捨てちゃった
そんな場合は、再発行の手続きを。直近のものに限り、再発行をすることができます。ただし時間や手間がかかるので、最新の通知書くらいはきちんと確認し、保管するのがおすすめ。支払われるはずの年金が支払われていなかったり、税金を多くとられていたりといったミスは、ゼロではありません。思わぬ損をしないためにも、きちんと確認することが重要です。
5月末、母が亡くなった…翌15日、母の通帳に年金が振り込まれてしまった
たとえば、
5月31日、80歳の母が亡くなりました……
そんな場合。年金を受け取る権利(受給権)は亡くなった日に喪失し、亡くなってから14日以内に「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出しなければなりません。しかしタイミング的に、母の死後に「年金振込通知書」は届き、さらに、6月15日には、亡くなった母の貯金通帳には年金が振り込まれることでしょう。
――2ヵ月分の年金、30万円が振り込まれちゃった!
どうしよう、どうしようと、右往左往してしまうかもしれません。そもそも年金は原則、2か月に1回、偶数月の15日に振り込まれます。
「12月と1月分」は「2月15日」に振り込まれます
「2月と3月分」は「4月15日」に振り込まれます
「4月と5月分」は「6月15日」に振り込まれます
「6月と7月分」は「8月15日」に振り込まれます
「8月と9月分」は「10月15日」に振り込まれます
「10月と11月分」は「12月15日」に振り込まれます
そして受給権を失った場合、その日を含む月の年金を受け取ることができます。だから、亡くなった母の預金通帳に振り込まれた30万円は、三親等内の親族のうち、「死亡当時生計を同じくしている者」が受け取ることができます。ただし、未支給年金の請求手続きが必要です。
また何かの手違いや「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出しなかったことで、本来、もらえるはずのない年金が振り込まれることも。6月に続き、8月にももらえるはずのない年金30万円の振込みが……
――1度受け取った年金だし、もらっちゃおう!
と、ネコババしてしまうケースも珍しくないといいますが、絶対NG。本来受け取れない過払いの年金を受け取った場合、不正受給により「3年以下の懲役又は100万以下の罰金」、無届等で「30万以下の罰金」など、ペナルティが科せられます。
――そんなつもりはなかったのよー
と叫んだところで後の祭りです。
[参考資料]