通販配達

 昨年秋から宅配ボックスを使っている。不在時の再配達の手間から「各家庭にボックスを義務付けてほしい」と、ネット上で配達員が訴えていたのがきっかけ▲少しでも役に立てばと願っているが、荷物を受け取る側にしても指定した時間帯に自宅にいなくていいというメリットがある▲アマゾンのようなネット通販の普及に伴い配達業務は厳しさを増している。以前の本紙1面にも「1日130個 業務増も変わらぬ賃金 経費は自己負担」との記事。残暑厳しい坂のまち長崎で噴き出る汗をぬぐいながら1軒1軒訪ねて回るドライバーの姿を伝えている▲このとき労働環境改善を求めて労組を結成した組合員を含む十数人が今月、配達契約を解除された。取材に応じた男性は労組結成が大きな理由と感じている▲そう言えば今月に入って、最近までよく目にしていた通販配達の軽ワゴン車が、通勤で通る道沿いの土地に何台も敷き詰めるように止めてあった。同僚記者に尋ねると契約を解除された配達員が使っていたが、一時的に置いているという▲利便性を追求し驚くほど短時間で手元に商品が届くようになった社会の陰で、そのしわ寄せに苦しむ人たちがいる。軽ワゴン車の前を通るたび、その責任の一端を突きつけられているような気がして落ち着かない。(堂)

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