新緑がまぶしい季節となった。自然豊かな鹿児島にあっては緑を大いに愛(め)でたい。南薩地方にある癒やしスポットを紹介する。
唐の高僧・鑑真が753年に漂着したとされる南さつま市坊津町秋目には、集落を見守るようにそびえ立つアコウの大木がある。高さ約20メートル、幹周り最大約9メートル。1971(昭和46)年に閉校した秋目小学校へと続く石階段沿いにある住民のシンボルツリーだ。
樹齢ははっきり分からないが、地元のNPO法人がんじん・里づくり秋目ネットは、「樹齢千年」「樹形日本一」と立て看板に記しアピールする。枝下には古い石像物が多数あり情緒豊かだ。島津家久の正夫人・持明院(1571~1630年)が再建したとされる正法寺の名残という。
アコウをめぐる住民の思い出は尽きない。近くの斎藤富子さん(93)は小学生のころ、夏休みに根の周辺にゴザを敷き友達と宿題をした。「涼しくて楽しかった」と懐かしむ。川村道子さん(75)も「木陰で本をよく読んだ」と振り返る。
「秋目のことを昔からよく知り、見守ってくれるおじいちゃんのような存在かな」と話すのは大迫初美さん(82)。夫で秋目ネット代表の忠興さん(81)は「集落の人口は50人足らずとなり寂しくなったが、生活の一部でもあるこの木をいつまでも大事にしたい」と誓った。