特産ウニが高くなりすぎた…100g2000円→70g3800円「もう手が届かない」 減る漁師、藻場を荒らす「食べられないウニ」増殖…阿久根で官民の挑戦が始まる

新鮮なムラサキウニから身を取り出す漁業者ら=阿久根市西目

 鹿児島県阿久根市内で4月末まで、「うにと阿久根の旬まつり」が開かれている。昨年まで恒例だった「うに丼祭り」をウニ高騰を受けて模様替えした。食のイベントで人気が高まった阿久根のウニだが、一方で漁業者の減少や海中の環境変化といった課題も浮き彫りになっている。

 うに丼祭りは2007年に始まった。同じ量のムラサキウニを使った丼を参加店が同一価格で提供する決まり。当初は100グラムで2000円だったが、次第に値上がりし、昨年は70グラムで3800円になった。参加店から「値段を聞いて来店をやめた客もいる。誰もが気軽に食べられる値段ではない」との声もあった。

 同市に本拠を置く北さつま漁業協同組合のウニ取扱量は07年度6300キロで3600万円だったが、22年度には3100キロで3900万円。キロ単価は実に倍以上に跳ね上がった。

 漁獲量の減少は、ウニ漁師が少なくなったことも背景にある。同漁協が発足した03年は潜水や素潜りなどで100人以上いたが、現在は約40人にとどまる。高齢者が多く50歳未満はわずか。「収入が不安定だから」と子どもに後を継がせない人が増えたという。

 ウニは海藻を根元からはぎ取って食べるため、取る人がいなければ、増えすぎて海藻を食べ尽くし磯焼けを起こす。同市西目の漁師浜崎聡さん(46)は「真っ白で何にも見えない。やっと見つけたウニにも身が入っていなかった」と磯焼けの海の姿を振り返る。

 不漁の昨年から一転、今年は豊漁だったものの、「人が手を加えてウニが住む環境を守っていかなければ」と表情を引き締める。

 温暖化の影響も指摘される。長年、阿久根のウニを見てきた尾塚水産=同市西目=の尾塚ヱイ子社長(75)は「食べられない南方系のウニが増えた」。市環境水産課によると、ウニと同じく磯焼けの原因とされるアイゴやクロダイなどが、冬になっても活動を続けているという。

 市は藻場形成のため、21年に海藻を植えたブロックを海中に入れたが、すぐ食べ尽くされた。「ウニの密度管理など、できることから進める」と24年度は国の補助を含め400万円かけ、磯焼けを起こすウニや魚の駆除に取り組む。

 尾塚さんもベンチャー企業と海藻の養殖を目指す。「企業や研究者、地域の人たちと協力したい」として、阿久根の海や漁業を守る決意を新たにしている。

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