時代を映す、学長あいさつ 鹿児島県内6大学入学式の式辞をAI解析で読み解く

 大学トップが伝えたかったこととは-。鹿児島県内6大学・大学院は今春、計4100人余りの新入生を迎えた。それぞれの入学式で、各学長が門出に贈った式辞や告辞を、ユーザーローカル社(東京)のAIテキストマイニングで解析すると、時代を踏まえたメッセージが見えてきた。

 女性活躍の推進が叫ばれる時代を象徴するように、入学式で新入生代表のあいさつに立ったのは、6大学とも女子学生だった。

 女性研究者のパイオニア、栄養学者の丹下梅子を取り上げたのが鹿児島大学の佐野輝学長だ。幼い頃、右目を失明する障害を負った丹下は、教育学部前身の鹿児島女子師範学校を卒業後、日米で博士号を取得した。

 佐野学長は、偉大な先輩を見習い「高い志をもって何事にも挑戦し、日々の積み重ねを怠らず励み続ければ、よい結果が後からついてくると信じて」とエールを送った。

 全国の大学で、学長に占める女性割合は1割強にとどまるが、県内では6校中3校で女性が務める。

 鹿児島純心大の山口明美学長は「創造性を必要としない仕事は、テクノロジーに代行されると言われる」時代こそ、「人のために」という創立者江角ヤス氏の教えが重要だと強調した。

 大学で学ぶ意義として、技術や知識を超えた「ノン・テクニカルスキル」の習得を挙げたのは、志學館大の飯干紀代子学長。知的好奇心を広げ、多様な意見に触れるよう説いた。

 第一工科大の都築明寿香学長は、建学の精神である「個性の伸展による人生練磨」と、「初心忘るべからず」の言葉で激励。「どんな困難にも立ち向かえる強さと柔軟性を学んで」と語り掛けた。

 「失敗」から学ぶ大切さを訴えたのが、鹿児島国際大の小林潤司学長。現在を「かつてほど安定せず、変化に富み、右肩上がりの成長は期待しにくい時代」だと評し、「失敗を糧に成長する」ことが重要だと諭した。

 全国からアスリートが集う鹿屋体育大の金久博昭学長は「文武不岐(ふき)」という言葉を引用。練習や稽古といった「実践」だけでなく、理論的な学びとの共存が、課題を解決する力の向上に役立つと呼びかけた。

 ◆各大学の入学者数 県内各大学の入学者数は次の通り(第一工科大以外は大学・大学院の合計)。
 鹿児島大2508人(うち女子1012人)▽鹿屋体育大222人(57人)▽鹿児島国際大706人(307人)▽志學館大346人(166人)▽鹿児島純心大163人(143人)▽第一工科大・鹿児島キャンパス187人(23人)

鹿児島県内で最多の新入生が入学した鹿児島大学の入学式=4月5日、鹿児島市の県体育館

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