奨学金を借りたいのですが、日本学生支援機構(JASSO)以外の奨学金ってどのようなものがありますか?

奨学金実施団体は3809団体、奨学金制度は給付・貸与など8834制度もある

日本学生支援機構「令和元年度奨学事業に関する実態調査報告」によると、地方公共団体、学校、公益団体、医療関係機関、営利法人、個人など実施団体は3809団体、これらの団体が実施している奨学金制度は給付・貸与など8834制度あります。

図表1

採用基準は、学力・人物を重視する制度および学力・人物と家計を同程度に重視する制度が多いようです。

各奨学金は、一般的に採用人数は少なく、規模も小さいので、採用されるのは難しいのが現状です。しかし、あまり知られていない奨学金もあり、採用実績のないものもありますので、採用人数が少ないからと諦めないで条件が合えば応募しましょう。

ただし、奨学金によっては、他の奨学金との併用が認められない場合がありますので、応募する前によく確認してください。

奨学金には大きく分けて、返済の必要がない「給付型」と返済が必要な「貸与型」があります。貸与型はさらに無利子と有利子があります。給付型、貸与型(無利子)、貸与型(低利子)の順で検討するとよいでしょう。

主な実施団体の奨学金

【地方公共団体(自治体)】

自治体の奨学金の特徴は、保護者や学生をその都道府県や市区町村の居住者あるいは出身者に限定している点です。給付型は少なく、無利子による月額貸与がほとんどです。日本学生支援機構の資料では、給付型は396件、貸与型は1103件、併用が15件となっています。

月額貸与のほか、入学準備金としてまとまった額を貸与する自治体もあります。また、地元の金融機関から低利で借りられるように、入学資金の融資あっせん制度を実施している自治体もあります。

看護師や理学療法士、保育士、介護福祉士など医療系・福祉系の国家資格を目指す人向けの奨学金制度を設けている自治体もあります。無利子月額貸与ですが、卒業後に国家資格を取得後、指定された施設に一定期間勤務すれば返済が免除になるのが特長です(例外あり)。働く施設を自由に選ぶことはできませんが、医療系・福祉系の国家資格を目指す方は検討してみてはいかがでしょうか。
ひとり親家庭を対象とした各種貸付金を低利、または無利子で利用できます。教育資金は無利子です。

東京都独自の制度として、塾費用20万円以内や受験料8万円以内の貸付を無利子で行い、大学等に入学した場合、返済が免除される受験生チャレンジ支援貸付事業を行っています。

【民間団体(公益団体)】

公益財団法人やNPO法人などが、奨学金事業を行っています。JASSOの資料によると、給付型が732件、貸与型が290件、併用が22件となっています。全体的に給付型の割合が高く、採用人数は少なく、学力基準・家計基準も高く設定されています。

「JT国内大学奨学金」「コカ・コーラ教育・環境財団」「電通育英会」「青井奨学会」「明光教育研究所」「似鳥国際奨学財団」「キッズドア基金」「あしなが育英会」「読売育英奨学会」など、数多くあります。

多くは、進学後に学校を通じて申し込む形ですが、卒業年次に申し込む予約型もあります。また、指定された高校・大学からしか採用しない奨学金もあります。

公益財団法人キーエンス財団の奨学金は、4年制大学への進学を志望する受験生を対象に、月額10万円を4年間給付するもので、総額は480万円です。全学部が対象で、募集人数は600名です。応募は学校を通さず、財団のホームページから直接します。申し込みには、所得制限を設けていません。

民間団体の奨学金を調べるには、奨学金検索サイトを利用するといいでしょう。

低所得の方は、社会福祉協議会の教育支援資金で、連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合は年1.5%の利率で利用できます。

【大学独自】

日本学生支援機構の資料によると、給付型は4670件、貸与型は920件、併用は25件と、他の奨学金に比べ、給付型が圧倒的に多いのが特徴です。
志望校の奨学金制度を大学のホームページやパンフレットなどでよく調べ、条件が合えば、積極的に活用しましょう。多くは、進学後に学校を通じて申し込む形です。
入学試験の成績優秀者に授業料を減免する「特待生制度」や、受験前に審査を行い入学後の奨学金受給を約束する「入学前予約型給付奨学金」もあります。

最も歴史のある神奈川大学の「給費生試験」は、給付型で、入学金相当額(20万円)を入学初年度に給付、文科系学部は年額100万円または110万円、理系学部は145万円を原則4年間給付、さらに自宅外通学者に対しては年間70万円の生活援助金も給付されます。地方出身者も安心して学業に専念できます。

早稲田大学独自の奨学金は、おおよそ150種類もあり、そのすべてが給付型で、日本学生支援機構や民間団体等との併用が可能となっています。入学前予約型給付奨学金、もあります。

まとめ

本記事で、日本学生支援機構(JASSO)以外の奨学金が、数多くあることをご理解いただけたのではないでしょうか。特に、大学独自や民間団体(公益団体)の奨学金は給付型が多いので、条件が合えば積極的に活用してください。

出典

日本学生支援機構 令和元年度奨学事業に関する実態調査
東京都福祉局 受験生チャレンジ支援貸付事業
公益財団法人キーエンス財団 奨学金
社会福祉法人全国社会福祉協議会 福祉のガイド 福祉の資金(貸付制度)
神奈川大学 奨学金案内及び奨学金一覧表
早稲田大学 早稲田大学独自の奨学金(学内奨学金)

執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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