PlayStation 5 Pro(仮)、三位一体の強化モデルで2024年末発売?これまでの噂を振り返る

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PlayStation 5の強化型モデル、通称「PS5 Pro」の噂話は、一時は下火となっていたこともある。すでにソニーの関心は真の次世代機「PlayStation 6」へと移り、PS5世代は着脱式ドライブ対応の改訂モデルで一区切りするとみられたからだ。

しかし、昨年末に改訂版(ディスクドライブ着脱式)PS5が登場する前後から、逆にPS5 Proの噂話は再燃している格好だ。

風向きが変わったのは、ゲーム業界の情報通として知られるTom Henderson氏が夏頃に「匿名情報筋の話を聞いた」と述べたことだろう。同氏は着脱式ドライブ対応の改訂モデルが登場すると的中させた経緯もあり、信ぴょう性が高まっている。

では、PS5 Proとはどういうゲーム機になるのか。これまでの自称リークや噂話をざっとまとめておこう。

レイトレ強化・高速ストレージ・超解像技術の「三位一体」

ソニー社内でPS5 Proの開発コード名が「Trinity」とされていることは、複数の識者らが一致していることだ。上記のHenderson氏も、最近ではこの言葉を多用している。

Trinityとは「三位一体」のこと。ソニーは過去にも映画『マトリックス』関連のコード名を使っており、たとえばPS4は「Neo(ネオ)」、初代PlayStation VRは「Morpheus(モーフィアス)」と呼ばれていた

この三要素とは、具体的にはレイトレーシングの強化、高速ストレージ、そして超解像技術によるアップスケーリングといわれている

搭載される新型チップ「Viola」は、PS5と同じZen 2ベースの可変クロックCPUを採用しつつ、最大3.5GHzから最大4.4GHzへと引き上げ。むしろ変化の重点はGPUにあり、現行のRDNA 2ベースからRDNA 3アーキテクチャに進化し、そこにRDNA 4から改良されたレイトレーシングを取り込むといったところだ。

要はPS5との互換性を重視するためCPUよりもGU、ほかグラフィック関連の機能を強化。それによりPS5と同じゲームを動かしつつ、レイトレーシング表現や解像度、フレームレートの向上を盛り付けるというアプローチだ。

ソニーがリーク情報を本物だと裏付け?

これらの予想は、いずれも当時は噂話の域を出ていなかった。それが真実味を帯び始めたのは、AMD関連のリーク情報(PS5のプロセッサーもAMD製)を扱うYouTubeチャンネルMoore’s Law is Deadが取り上げた「内部文書」がきっかけである。

このYouTube動画では文書の一部にぼかしが掛けられていたが、ほどなく「著作権の申し立てがあったため」削除された 。そのため、逆に本物だった可能性が高まったわけだ。

本文書に記されていたことは、ざっと次の通りだ。

  • PS5より45%高速なレンダリング
  • 2~3倍のレイトレーシング(最大4倍)
  • 33.5TFLOPS
  • 超解像技術「PlayStation Spectral Super Resolution Upscaling」(PSSR)を実現
  • 将来のSDKでは8Kまでの解像度をサポートする予定
  • カスタム機械学習アーキテクチャを搭載。6ビット浮動小数点演算性能は67TFLOPS

かなりのパワーアップにも思えるが、PC用グラフィックカードでいえばPS5が Radeon RX 6700相当、PS5 ProはRadeon RX 7800 XTに近い性能とのこと。

前者と後者の発売時期は約2年ほどの違いであり、ちょうど「中世代機」(次世代機までの中継ぎ)に相応しいアップグレードといえそうだ。

「PS5 Pro Enhanced」ラベルが付与される条件

PS5 Proの強化された機能は、基本的にはゲーム開発者側で対応する必要があるといわれる。未修正ゲームも「ウルトラブースト」により解像度が上がる可能性もあるが、その多くは恩恵を受けられないと警告されているとの噂もあった

そうした対応ゲームに付与されるといわれるのが「PS5 Pro Enhanced」というラベルだ。全ての機能を活用することは必須ではなく、ごく一部で構わない。その内容は、ざっと次の通りだ。

  • 通常モデルで固定リフレッシュレートで動くゲームの解像度を向上
  • 通常モデルで可変リフレッシュレート(VRR)で動く解像度を向上
  • 通常モデルで固定リフレッシュレートで動くゲームの目標フレームレートを30fpsから60fpsに向上
  • 解像度やフレームレートはそのままに、レイトレーシング効果を有効とする

かなりハードが強化される見通しを考えると、非常に控えめなアップグレードではある。

これにつき『『The Elder Scrolls』シリーズ等を手がけたベテラン開発者は、「すでにPS5標準モデル用の予算が組まれているため、目標スペックを引き上げることは困難」であること。そしてゲーム開発者らは真の次世代機PS6につきソニーと話し合いを始めている可能性が高いとして、中世代機に大きなリソースを割くわけにはいかないとし指していた。

最大の強みは「本体のコンパクトさ」と「価格の手頃さ」か

このPS5 Proがターゲットとする主な客層は、まず第1にPS5標準モデルの性能に満足できないユーザーだろう。それは裏返せば、「まだPS5現行モデルを買ってない」人々は対象から外れることになる。

とはいえ、新規ユーザーがPS5 Proに魅力を感じる余地はあるはずだ。まず、「価格が標準モデルとあまり変わらない」可能性だ。

初代PS5が発売されてから3年以上が経過しており、新型コロナ禍によるサプライチェーンの混乱も収束した今となっては、当時よりコストを押し上げる要素はほとんど見当たらないとの説もある。そのため、現行モデル+ディスクドライブ付き程度に収まるという見方だ

もう1つは、チップのプロセスルールが4nmとなる(現行モデルは5nm)ことで小型化や発熱の低減が実現し、ボディの小型化も可能になるというものだ。

ディスクドライブ着脱式の最新型も「スリム」とは言い難く、日本の家屋事情ではまだまだスペースを取り過ぎている印象がある。冷蔵庫にも例えられる「Xbox Series X」と比べればコンパクトだが、そもそも日本ではXboxの存在感が薄い。

もう少し小型化して発熱も減り、Proモデルとしては穏当な価格を打ち出せたなら(さらに標準モデルの値下げもあれば)、もしかすると日本でPS5シリーズが普及する起爆剤となるのかもしれない。今のところ2024年末発売と予想されているが、さらなる追加情報を待ちたいところだ。

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