「出張経費で泊まれるところ少ない…」首都圏ホテル代、1年半足らずで2倍以上 地方企業やビジネスマン、高騰に苦慮 社規定見直しの検討も

東京都内 平均客室単価の推移

 首都圏を中心とした宿泊料金の高騰で、出張に行く山陰両県の企業関係者らが苦慮している。インバウンド(訪日客)や国内旅行者らが東京に集中し、都内の宿泊料金は2022年と比べて2倍以上に跳ね上がる。出張経費内で宿泊するため、社員は早期予約や郊外のホテルを探すなどして対応し、出張費に関する社規定の見直しを検討する企業もある。

 「出張が分かり次第、なるべく安い宿を押さえるようにしている」-。8日午前の米子空港ロビー、東京行きの飛行機を待つ米子市の食品関連業者の社員(39)が吐露した。会社の宿泊費の上限は1泊1万円。自ら宿泊先を探すが「最近、経費内で泊まれるところが少なくなった。(上限を超える部分は)自分で負担する同僚もいるだろう」と口にした。

 東京都内のホテル業者でつくる東京ホテル会(加盟223店)によると、23年12月の平均客室単価は1万6947円。前年の12月(1万2663円)と比べて33.8%増。8月(7844円)と比べると116.1%増と2倍以上に高騰している。

 背景にはインバウンドの急増がある。水際対策が緩和された22年10月以降、急速に回復。日本政府観光局によると、23年10月からは月間の訪日客がコロナ禍前の水準を超え、12月は19年の同月比8.2%増の273万4千人となった。

 東京ホテル会によると、円安などで海外を避ける国内旅行客も東京に殺到。需要と供給に応じて宿泊費が変動する状態が続いている。同会の高部彦二代表は「コロナ禍当初のマイナス分を取り返したい事業者は多く、高騰傾向は今後も続く」とみる。

 一方、日常的にホテルを利用する企業やビジネスマンにとっては大きな痛手だ。島根ナカバヤシ(出雲市矢野町)では、出張時の宿泊先は総務担当者が押さえる。担当者は「東京は最低でも1泊1万5千円の状況。(通常の経費では)これまで利用していた宿が予約できない」とし、周辺部にある割安の宿を探すなど対応しているという。

 また、業界団体の会合などで社員の出張が発生するカナツ技建工業(松江市春日町)の森脇俊郎取締役総務部長は「社員の負担を増やしたり、業務の効率性を落としたりしてはいけない」と強調。宿泊料金の急騰を受けた臨時の経費補助や、定額で支給する宿泊経費の値上げを含めて検討するとした。

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