没後100年 27年ぶりの京都開催 「最後の文人画家・富岡鉄斎」の画業と生涯を回顧

『富士山図』(右隻)1898年 63歳 清荒神最澄寺 鉄斎美術館

2024年、没後100年となる富岡鉄斎。「最後の文人画家」として称えられている鉄斎の画業と生涯を回顧する「没後100年 富岡鉄斎」が、京都国立近代美術館で開かれている。2024年5月26日(日)まで。

【写真】「富岡鉄斎の画業の一部を写真で見る!」

幕末に京都の商家に生まれた富岡鉄斎は、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に様々な学問を学んだ。それと同時に様々な流派の絵画も独学し、深い学識に裏付けられた豊かな画業を展開した。良い絵を描くためには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要であるという先人の教えを徹底して守ろうとし、何を描くにもまずは研究し、全国を旅して各地の景勝を探った。人間の理想を説いた鉄斎の絵画は画壇の巨匠から敬われ、新世代の青年画家たちからはその表現の自由闊達で大胆な新しさで注目された。生誕地である京都での展覧会はこれまで多くなく、今回は27年ぶり。会場には名作として取り上げられてきた作品のほか、これまであまり展示されてこなかった作品、近年になって再発見された作品などが並び、「鉄斎の決定版」との位置づけになった。

63歳の時に描いた『富士山図』。右側に描かれているのは麗しい姿の富士山だが、左側には火口付近のごつごつした表情を描いている。「右は理想郷として描いているが、左は現実を描いた。この対比がユニークなところで、若い頃に鉄斎自身が登った経験があるから描けたもの」と京都国立近代美術館の梶岡秀一学芸課長は分析する。

数え年89歳まで生きた鉄斎の画業は、60代までにひとつの円熟期を迎え、70代からはさらに自由奔放に展開された。展示を通してその変遷と魅力を感じることができる。

鉄斎は画家としてだけではなく書家としても親しまれていた。印章に特別な愛着・興味を持っており、そのコレクションも多い。自ら彫ることもあったといい、その一部も紹介する。さらに室町通一条下ルにあった画室に置かれていた硯や墨、筆、絵具などの日用品なども展示、鉄斎の日常を垣間見ることができる。

今展に出品されるのは376点で、期間中に3回展示替えを行う予定。また、富山・静岡にも巡回するが、京都でしか公開されない作品も多いという。

「没後100年 富岡鉄斎」
会場 京都国立近代美術館
期間 2024年4月2日(火)~5月26日(日)
会期中に一部展示替えがあります。
休館日 月曜日
※ただし4月29日(月・祝)と5月6日(月・祝)は開館、4月30日(火)と5月7日(火)は休館

© 株式会社ラジオ関西