TikTok、全米での配信禁止は「言論の自由を踏みにじる」 米下院での法案可決に反発

動画投稿アプリ「TikTok」は21日、アメリカ連邦議会の下院が同アプリ禁止法案を可決したことについて、アメリカ国内での配信を禁止すればアメリカ国民1億7000万人の「言論の自由を踏みにじる」ことになると反発した。

米下院は20日、「TikTok」の中国の親会社バイトダンスがアメリカでの事業を360日以内に売却しなければ、全米でアプリ配信を禁じる法案を、360対58で可決した。

これはウクライナ支援を含む、アメリカの外交政策パッケージの一部。早ければ今週中に上院でも可決され、ジョー・バイデン大統領が署名する見通し。

禁止法が成立した場合、バイトダンスは9カ月以内に株式を売却しなければ全米で配信が禁止される。

米政府関係者はここ数カ月間、若者の間でTikTokが人気であることに警鐘を鳴らしてきた。

親会社バイトダンスは中国政府の言いなりになっていると、米政府関係者は主張しているが、同社はこうした非難を繰り返し否定している。

1億7000万人の「言論の自由を踏みにじる」

TikTokの広報担当は禁止法案について、「1億7000万人のアメリカ人の言論の自由を踏みにじり、700万社のビジネスに壊滅的打撃を与え、アメリカ経済に年間240億ドル(約3兆117億円)貢献しているプラットフォームを閉鎖することになる」と非難した。

TikTok側は、バイトダンスは「中国あるいはそのほかの国のエージェント(代理人)ではない」としている。バイトダンスは、多くの世界的投資会社が同社株式の60%を所有していることを挙げ、同社は中国企業ではないと主張している。

バイトダンスは中国の起業家たちによって2012年に設立された。中国でショートビデオアプリ「抖音(ドウイン)」を立ち上げて大成功を収め、1年後には国際版アプリTikTokを開始した。

TikTokは中国国内での利用は禁止されているが、5年間で10億人のユーザーを獲得した。

中国政府の影響を懸念

現在はロサンゼルスとシンガポールを拠点とする有限責任会社が運営しているが、実質的な所有会社はバイトダンスだ。

創業者たちはバイトダンスの株式の20%を所有している。約60%は、ゼネラル・アトランティック、サスケハナ、セコイア・キャピタルといった米大手投資会社を含む機関投資家が所有している。

残りの20%は世界中の同社従業員が所有している。取締役5人のうち3人はアメリカ人だ。

しかし、中国政府が近年、民間企業に対する支配力を強めていることから、アメリカはバイトダンスや同社が保有するデータに対して中国政府がどれほどの影響力を持っているのか懸念している。

中国はこうした懸念はアメリカのパラノイア(偏執症)だと一蹴し、TikTokを全米で禁止すれば「アメリカは否応なくしっぺ返しを食らうだろう」と警告した。

2022年以降、TikTokはセキュリティ上の懸念に対処するため、テキサス州拠点の米ソフトウエア大手オラクルを介して、アメリカの全ユーザーのデータを管理している。

TikTokは、アメリカ側のデータは守られ、米国内のオラクル・サーバーに保存されると強調している。

20日の採決に先立ち、ラジャ・クリシュナムルティ下院議員はBBC番組「ワールド・ビジネス・レポート」で、TikTokアプリの配信継続を望んでいると語った。

「私はこのアプリには良いコンテンツがまだたくさんあると思っている」と同議員は述べた。「しかし最も重要なのは、敵対国の支配下あるいは敵対国の運営下では、そうはならない(良いコンテンツは得られない)ということだ」。

(英語記事 TikTok warns US ban would 'trample free speech'

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