【ライブレポート】w.o.d.4月の恒例イベント『TOUCH THE PINKMOON』を東京と地元大阪で開催! 東京公演ゲストはTHE SPELLBOUND

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“Pink Moon”は4月の満月を指す。w.o.d.の春の風物詩、『TOUCH THE PINKMOON』も今年で3回目。東京公演はTHE SPELLBOUNDを招いて、昨年に続いて恵比寿LIQUIDROOMでの開催である。彼らの大ファンである3人が昨年、中野雅之をプロデューサーに迎えて「My Generation」を制作したのがいわばイントロダクションになっている。

リストバンドを受け取って少し早めに会場に入ると、ロビーには棺桶(My GenerationのMusic Videoに出てくる)やブラウン管テレビのオブジェが並び、フロアはピンクの明かりに照らされていた。月を模ったバルーンが吊るされたDJブースではKen MackayがオープニングDJを務める(サイトウタクヤと中島元良が横から茶々を入れている)。イベント名そのままの演出に気分が高揚した。

開演時間の19時ちょうど、THE SPELLBOUNDがステージに登場。小林祐介が「今日は呼んでくれてどうもありがとうございます。よろしくお願いします」という短い挨拶に続けてBOOM BOOM SATELLITESの「KICK IT OUT」のイントロのリフを繰り出すと、フロアは俄かに熱狂した。

小林と中野も、サポートドラマーの福田洋子と大井一彌も全身黒ずくめ。昔、鈴木慶一がデヴィッド・ギルモアのライブDVDを見て、やはり黒ずくめの服装に「これは自分を見るんじゃなくて音楽を聴いてくれってことなんだろうね」と話していたのを思い出したが、フロントの2人の色気のあるたたずまいはどうしても目を惹く。ステージ右手のエントランス近くではイラストレーターYUGO.によるライブペインティングが行われていた。

「名前を呼んで」「Nowhere」「LOTUS」「はじまり」「なにもかも」「FLOWER」と、同期と生演奏が溶け合った幅も奥行きも十二分の立体的なサウンドスケープに映える小林の柔らかいボーカルとシャープなメロディは、THE SPELLBOUNDの絶対的な強み。フロアに感情の波が広がっていくさまが手に取るようにわかる。もちろん僕も圧倒された。

「最後に1曲、サイトウくんと一緒に特別な曲をカバーして終わりにします」とサイトウタクヤを招き入れる。「僕たちにとっても、きっとサイトウくん、w.o.d.にとっても、大事な曲だと思います」とコメントして、ミッシェル・ガン・エレファントの「ダニー・ゴー」。それまでの完成度の高い世界観から一転し、ステージ上の全員が学生のバンドマンに戻ったようなピュアな演奏で締めてくれた。

IWAMI TAISHIのDJがさらにフロアを温め、20時10分ごろにお馴染みのヴァニラ・ファッジ「Ticket to Ride」の出囃子に導かれておもむろにw.o.d.が登場する。サイトウのリフが空気を一変させ、2ndアルバム『1994』の開幕曲「0」でスタートだ。Kenのベースが引っ張る「イカロス」、元良のカウントでブルージーな「Kill your idols, Kiss me baby」、今やなつかしい「lala」「1994」と、5曲を立て続けに披露した。

「TOUCH THE PINKMOONにようこそ。w.o.d.です」と、ここで初めてサイトウがMC。「うれしい。BOOM BOOM SATELLITESのピック、俺のアンプの上に乗ってるわ」と人懐っこい笑顔を見せる。DJ Ken Mackayを筆頭に、DJ、ライブペイント、フォトグラファー、アートディレクター、映像ディレクターなど所縁のコラボレーターたちを紹介して「めちゃくちゃ自由に遊べて、めちゃくちゃ人に優しいイベントにできたらいいなと思います。今日はいっぱい遊びましょう。よろしく」と語るMCに、サイトウの人柄とw.o.d.のバンド柄がよく出ていた。

「馬鹿と虎馬」「モーニング・グローリー」「Mayday」「スコール」に続けて、「今日、歌える人いっぱいおると思うから、歌ってみる? こういうのもやってみたいんすよ」と唱和を促して「オレンジ」を披露する。すべての音に濁音がつくハードロックでシャウトしたかと思うと、こういう詩情豊かな曲もさりげないエモーションを伴って歌えるのがサイトウタクヤの詩人の魂。曲名に合わせたオレンジ基調の照明が印象的だった。

「今日、オモロdayなんで」と話し始めると、サイトウの中で俄かに「オモロ」がキーワードに。夏に開催するツーマンツアーの対バン相手を発表して(go!go!vanillas、キタニタツヤ、ハルカミライと、1組ごとに歓声が大きくなっていくのがオモロかった)、「オモロいな~、俺」と自惚れてみせ、元良に「今ウケてたのゲストバンド出したからだよ」と突っ込まれて「そやね」と笑う。こうしたかわいらしいやりとりも彼らの味だ。

「楽しいなー。楽しいすか、みなさん。(拍手と歓声に)最高や。毎年やるんで、来年も遊びましょう」と呼びかけて、昨年夏のメジャーデビュー曲「STARS」、一度初期に戻って「Wednesday」「Fullface」、さらにw.o.d.流ダンスミュージック「踊る阿呆に見る阿呆」で押しまくる。「PINKMOONってちょっと特別なイベントで、いちばん自由に遊べる場所かもなって思ってます。毎年遊びましょう。来年もよろしく。ラスト1曲です」と語り、中野雅之プロデュース曲「My Generation」でショーを締めくくった。

客出しのBGMはもちろんニック・ドレイクの「Pink Moon」。ドレイクが「ピンクの月がやってくる 君たちは誰も堂々としていられないよ ピンクの月に飲み込まれてしまうんだ」と何やら不吉なニュアンスで歌ったピンクの月に、w.o.d.はみずから手を伸ばしている。共演者たちや観客を「一緒に触ってみいへん?」と誘っている──と考えてみると、ロマンチックで色っぽい彼らのたたずまいにふさわしいタイトルと思えてくる。

終演後に3人に感想を尋ねると「楽しかった!」(サイトウ)、「これからもやっていきたいイベントになりました!」(Ken)、「楽しかった!」(元良)とシンプルこの上ないコメント。そりゃそうだろう。リラックスしているように見えたし、両バンドともとにかく音がでかかった!

毎年やると言っていたが、規模は大きくなってもならなくてもいいから、仲間たちと一緒に「めちゃくちゃ自由に遊べて、めちゃくちゃ人に優しいイベント」をさらに成長させてもらいたい。

文:高岡洋詞 写真:小杉歩

<公演情報>
『w.o.d. presents "TOUCH THE PINKMOON"』

4月12日(金) 東京・LIQUIDROOM
■出演者・出展者
w.o.d. / THE SPELLBOUND [東京公演] / Helsinki Lambda Club [大阪公演] / DJ Ken Mackay(w.o.d.) / DJ IWAMI TAISHI(SUPERFUZZ)[東京公演] / DJ DAWA (FLAKE RECORDS) [大阪公演] / Photographer - Ayumu kosugi / Art Director - Keitaro Terasawa / Video Director - MOTO / Illustrator - YUGO.

セットリスト■THE SPELLBOUND1. KICK IT OUT2. 名前を呼んで3. Nowhere4. LOTUS5. はじまり6. なにもかも7. FLOWER8. ダニー・ゴー feat.サイトウタクヤ(w.o.d)■w.o.d.1. 02. イカロス3. Kill your idols, Kiss me baby4. lala5. 19946. 馬鹿と虎馬7. モーニング・グローリー8. Mayday9. スコール10. オレンジ11. STARS12. Wednesday13. Fullface14. 踊る阿呆に見る阿呆15. My Generation

<ツアー情報>
『w.o.d. presents “スペース・インベーダーズⅥ"』

6月29日(土) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
OPEN 17:00 / START 18:00
GUEST:go!go!vanillas

7月12日(金) 東京・Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:00 / START 19:00
GUEST:キタニタツヤ

7月15日(月・祝) 大阪・GORILLA HALL
OPEN 17:00 / START 18:00
GUEST:ハルカミライ

■チケット一般発売(先着):4月27日(土)10:00~
https://w.pia.jp/t/wod-w/

w.o.d.オフィシャルサイト:
https://www.wodband.com

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