駐在員が拘束、ビザ申請は拒否…アフターコロナでも閉ざされた中国の壁 識者は激安アパレル『Shein』値上がりの可能性も指摘

日本人へと扉を閉ざす中国 画像はphotolibrary

新型コロナウイルスの影響も徐々に収まり、活気を取り戻しつつある日本。4月末からスタートする大型連休は、コロナウイルスが感染法上の5類へと移行し、飲食店への営業時間短縮要請や屋内におけるマスク着用の義務化が撤廃され、初めて迎えるGWだ。

長期休み中は、国内外にある観光スポットを訪れようと胸を高鳴らせている方も多くいることだろう。そんな中、コロナ騒動以前までは日本国民へと広く解放していた扉を、固く閉ざしたままの国がある。

全国紙国際部の記者が話す。

「コロナ禍前まで日本人は、15日間の短期滞在であれば中国へとビザなし訪問が可能でした。しかし、コロナ真っ只中の2020年春に優遇措置は停止。以後、政財界を筆頭に中国指導部へと再三ビザ免除の要請をしたにもかかわらず、中国側の回答は“両国間でビザなし往来ができるようになれば”というものばかり。状況の改善は一向に見られません」

かつては存在した両国間の経済格差も徐々に縮まり、そして2010年、中国はついに、GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位に。

「03年からは、技術交流や人材交流の観点から滞在日数15日以内の場合に限り、日本人はビザなしで中国への入国ができました。一方で、中国が世界2位の経済大国へと上り詰めた後も、中国籍の人間が日本へと入国するのにビザは必須だった。両国間のパワーバランスが変わりつつある今、日本側も譲歩の必要はあるのかもしれません。それでも、現在の中国側の措置は厳しすぎる、という声は多くありますね」(前同)

中国事情に詳しく『ルポ中国「潜入バイト」日記』(小学館)などの著書があるライターの西谷格氏によれば、現地での日本人の扱いは「良くはない」という。

「23年3月には、アステラス製薬に勤務する50代の日本人男性社員が反スパイ法違反容疑で拘束。その後、逮捕までされています。1年以上たった今も出国は許されておらず、拘束が続いた状態です。18年2月には、中国駐在をしていた伊藤忠商事の40代男性社員が、“国家の安全に危害を加えた罪”で懲役3年の実刑判決を受けており、21年2月まで出国が許されませんでした」(西谷氏)

■ビザ申請を拒否、入国できないケースも

不穏な中国の現状。ビザなしで入国できるほど優遇されていたコロナ禍前とは、状況が一変しているというわけだ。さらに、現地での拘束が相次ぐ日本人駐在員。中国国内での不穏な動きと歩調をあわせるかのように、中国への入国を日本人が拒否される例も相次いでいるという。

「マスコミ業界の関係者に多いですね。現地の大学への留学のためにと中国への渡航を試みて、ビザを申請したものの、許可がおりないという話は珍しくありません。反スパイ法が制定されている中国において、許可を得ていない者による取材活動は、スパイ活動と紙一重、との見方を当局は持っているのでしょう。

また、マスコミ業界で働く人間が、中国への旅行用のビザを取得する際には、“私は観光目的での訪中であって取材目的ではありません”と一筆書く必要があるほどです」(前出の西谷氏)

海を隔ててすぐ近く。飛行機で3時間半ほどの距離にありながら遠い国となってしまった中国。「この状況はビジネス業界にも大きな影響を及ぼしかねない」と西谷氏は指摘する。

「社員に危険が及ぶ可能性を否定できないとして、日本企業の間では中国駐在員の数を減らす企業が相次いでいます。現に22年末には、下着大手メーカーであるグンゼも、中国工場でのストッキング生産を終了。大手商社の中にも一時、出張を停止する企業が出たほどです」(前同)

これらの動きは、中国から日本へと輸出される商品の質にも大きく影響を及ぼしかねないようだ。

「中国の現地工場で勤務する日本人社員の数が減れば、日本企業が中国で製造して輸出している商品の工場管理や検品作業などを監督する現地の管理者も減るわけです。すると、商品の品質にも影響が出かねません。

また、23年6月に中国国内で記録された16歳〜24歳の失業率は過去最高となる21.3%。経済停滞や人件費の高騰が原因で、今後、中国製品の価格が上がる可能性は大いにある。若者の間で注目を集めている中国発の激安ファッションサイト『SHEIN』なども、価格訴求力が失われていく可能性は十分にあるでしょうね」(同)

大きく変化していっている大国・中国。コロナ禍で断絶された日中の関係が再び、友好になる日は来るだろうか。

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