「アニメーションの仕事がなくてやった発掘現場のアルバイトがきっかけ…」考古イラストレーター・早川和子さん 瓜尻遺跡の復元図(高知・安芸市)

古代の遺跡がどのようなものだったか、イラストで描かれる復元画。京都在住の考古イラストレーターが高知県安芸市の安芸市立安芸中学校にある遺跡の復元画を手がけました。

(藤崎美希アナウンサー) 「4月に新しく開校した安芸中学校に来ています。なんとこの場所、およそ1300年前瓜尻(うりじり)遺跡という古代遺跡があった場所なんです!」

4月に2つの中学校が統合して誕生した、安芸市立安芸中学校。

建設に伴った発掘調査で、ここには1300年前の奈良時代、今でいう役場のような建物や運河があったことが分かりました。

中学校では遺構を樹脂で保存。「遺跡広場」という名前をつけました。

当時の景色を再現したのがこちらのイラスト=復元画です。運河を活用した人々の暮らしが見て取れます。

この復元画を描いたのが考古イラストレーターの早川和子(はやかわかずこ)さん。

40年以上、国内だけでなく海外の遺跡の復元画も手がけてきました。京都在住の早川さん、高知を訪れていたため特別にお話を聞くことができました。

(藤崎アナ) 「早川さんは高知は何回目ですか?」

(早川さん) 「3回目です。初めて桂浜に行ってきました。初めて高知でカツオを食べました。抜群に美味しいです」

(藤崎アナ) 「私たちがいるのは、まさにこの瓜尻遺跡を樹脂で再現してるところなんですよね」

(早川さん) 「ちょうど今いるこの場所、溝と塀に囲まれた特殊な場所で井戸の跡があるんですね。何か特別なとこだったような感じがする場所で。

二人が座っているこの場所。早川さんのイラストではこのように描かれています。溝と塀に囲まれ、外からは見えないようになっていて、中には井戸と倉庫のような建物が1つ。

全国的にも珍しい作りで神聖な場所だったと考えられています。

(藤崎アナ) 「まず復元画を描くようになったきっかけは?」

(早川さん) 「大学を卒業してから、まず、アニメーターになったんです。そのときにたくさんの人物を書いて、今あるような人間の姿が描けるようになりました」

早川さんは、「天才バカボン」や「エースをねらえ!」など国民的アニメの制作にも携わっていました。

(早川さん) 「それから、関西に引っ越したんですけどアニメーションの仕事がなくて、発掘現場のアルバイトをしたんです。そのときに整理員をやってまして、整理員さんが現地説明会の資料を作るんですそのときの表紙に柱の穴がいっぱいあったので、『上に建物を描いたらどうですか』って。提案したのが初めてです」

(藤崎アナ) 「ご自身が提案して、もう描いてみようと?」

(早川さん) 「そうそう、だからここまで続く仕事になるとは思ってなかったんです。ただ、発掘現場を皆さんにわかりやすくするには絵があった方がいいなっていうのが最初です」

(藤崎アナ) 「私たちには当時の様子がどのようなものかっていうのはわからないじゃないですか、どうやって復元画を描いてらっしゃるんですか?」

(早川さん) 「それを話すと大変なんですが、古代はわからないことだらけなんです。私は、発掘でわかった史料に基づいて図面に正確に建物の位置とか全て描くんですが人間のことはあまりわからないんですね。泣いたり笑ったり喜んだり怒ったりは、今の人たちと一緒だと思うんです。だから私の復元画明るいんですよ」

(藤崎アナ) 「本当に色を見ても、ぱっと明るい気持ちになりますし、とっても優しい気持ちになるというか、ぬくもりというのを感じられるんですけれども」

(早川さん) 「古代は人権も何もなくて、今の私達のような豊かな生活じゃなかったと思うんですね。それでも楽しいこととかいろんなことを見つけて、暮らしていたんじゃないかなって想像してます」

遠い遠い、古代の人々に思いをはせることができる、復元画。この場所に、はるか昔に確かにあった人々の暮らしを想像すると、古代に心が近づいているような気にもなります。

(早川さん) 「日本列島どこに住んでいても、旧石器時代から人がいるんですね。だから、旧石器時代からの歴史が脈々と流れて今に至ってて、私たち平和に暮らしてますが、過去をたどれば、ご先祖様にあたるんじゃないかなと思うんですね。だからそれをもっと子どもたちが自分の足の下には、旧石器時代からの歴史があるっていうのを言葉で覚えるんじゃなくて、絵で脳に焼きつけてもらって、将来の役に立ててほしいなと思います」

早川さんの描いた瓜尻遺跡の復元画や、出土された瓦などは安芸市立歴史民俗資料館で展示されています。

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