「頑張ったのに取れなかった」今季の県産ノリ日本一奪還ならず 西部の漁業者からは悲痛な声【佐賀県】

今シーズンの県内のノリ漁は有明海の多くの地域で不漁に見舞われ、販売枚数・販売額ともに日本一奪還はなりませんでした。特に近年、色落ち被害が著しい西部の漁業者からは「頑張ったのに取れないのが苦しかった」など悲痛な声が上がっています。

【鹿島のノリ漁業者】
「質も枚数も過去最低で、来年もこのまま続けば、ほんて厳しいですね」
【鹿島のノリ漁業者】
「(まとまった雨は)3月の終わりくらいに降って、その前に何も降らなかったので、それがですね。頑張ったのに取れないというのがやっぱり苦しい」

【リポート・波佐間崇晃】
「午前7時すぎの有明海です。風はほとんど吹いていません。ノリの支柱の撤去が行われています」

4月16日、有明海の西部に位置する鹿島市沖。4月11日ごろにノリ網を支えた柱の撤去が始まりました。

【鹿島のノリ漁業者 中島龍さん】
「雨が少なくて悪い条件が続いた。1カ月雨が早かったら、良い形(ノリ)ができていたのにそれが残念です」

鹿島のノリ漁業者、中島龍さん。親から引き継いだノリ漁を39年続けてきましたが、これほど苦しいシーズンはなかったといいます。

【鹿島のノリ漁業者 中島龍さん】
「秋芽網ノリはまずまずの収入源があったが、冷凍網ノリになって1月の中旬以降から張り込んだが、色落ちして」

県内では今シーズン最後となった4月2日の入札会。この日は約2100万枚が出品され、シーズンを通した累計販売枚数は9億9000万枚。

【県有明海漁協 深川辰已参事】
「雨が今年は遅かったんで。もうちょっと早く降ってくれれば、もうちょっと取れたと思います。栄養塩不足ですね」

累計販売枚数は記録的な不作となった昨シーズンの9億1000万枚を上回った県産ノリ。しかし、昨シーズン販売枚数・販売額で全国トップだった兵庫県は今シーズンの入札会を2回残して既に販売枚数は10億枚を超えていて、佐賀県は2年連続、日本一を逃しました。

【白石のノリ漁業者 森慎二さん】
「こんな感じです。色がないんで。栄養がないけん伸びない」

今年1月の白石沖。県内では、特に去年12月から今年1月にかけてまとまった雨が降らず、ノリの色落ち被害が相次ぎました。

【白石のノリ漁業者 森慎二さん】
「去年も大変だったんですけど、去年より厳しいという感じ」

多くのノリ漁業者は苦肉の策として、例年年明けごろから始める冷凍網ノリの張り込み時期を半月ほど遅らせることに。最終的に、全国的な品薄から単価は上がりましたが、摘み取りの回数が減ったことで、生産枚数も減りました。

【中島龍さん】
「(鹿島市沖では)塩田川の川筋だけが唯一良い状態。川が流れているところだけは、栄養塩があるんですよ」

鹿島市沖は東から第1、第2、第3と3つの漁場に分かれています。まとまった雨によって川から海に供給される栄養塩。漁場によってその量に差が出たといいます。

【中島龍さん】
「第3漁場なんか特別悪かった。特に第3なんかは全然川の水が流れてこない、その影響で色落ちがものすごく厳しい」

加えて、近年直面している慢性的な問題が漁業者を悩ませます。

【中島龍さん】
「支柱撤去をしているのに、支柱にフジツボがついていない。39年(の漁生活)で一番フジツボがついていなかった。底質が良い時は二枚貝が一面にいたんですよ」

かつての有明海は、フジツボや、アカガイなどの二枚貝が豊富に生息していましたが、近年は激減。一方、二枚貝の主なエサだったプランクトンは増殖しました。
有明海再生機構によりますと、増殖傾向にあるプランクトンが水中の酸素濃度の低下を招き、底質悪化につながっていることなどが原因として考えられるということです。
特に今シーズンは雨が少なく、冬場に暖かい日が多かったことがプランクトン増殖に拍車をかけた格好となりました。

【中島龍さん】
「大雨が降ったら押し流す力があるけど、中々プランクトンが消えなかった」

状況を少しでも打開しようと、県有明海漁協鹿島市支所では5月下旬ごろから機械で海底をかき混ぜる「海底耕うん」に取りかかる見通しです。どの場所がより効果が出るか専門家を交え、話し合いを進める方針です。

【中島龍さん】
「対策を全員で練りながら今年(来シーズン)に向けて頑張りたいと思います。少しでも良い形にもっていきたいと思います」

県有明海漁協鹿島市支所によりますと、ピーク時には佐賀県全体でとれるノリの13%余りをつくっていましたが、今シーズンは6%ほどになっているということです。
大幅な不漁が続く西部の漁場ではノリ漁を廃業したり、廃業を検討したりする漁業者も増えているということです。

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