「子育て支援はもうずれてます」70代→40代→60代、人口構造の高齢化 若い女性の流出阻止が最大の課題 富山県

国内の多くの地方が直面している人口減少問題。そのなかで、4月時点の人口が100万人の大台を割る見通しとなった富山県では、最も多いのが70代、そして40代、60代となっていて「人口構造の高齢化」が問題だと指摘されています。その根本原因を変えていかなければ“子育て支援”すら有効ではないと厳しい意見も出ています。

富山県では4月1日時点の人口が100万人の大台を割る見通しとなりました。富山県の県政エグゼクティブアドバイザーで少子化対策に詳しい、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子さん(人口動態シニアリサーチャー)は、富山県の課題はズバリ「人口構造の高齢化」だと指摘します。

天野馨南子さん:「100万人を切りますとか、200万人を切りますっていう数字自体はあまり問題がないんですね。その自治体がその後の未来永劫、発展性があるかないのかっていうところは、人口構造で決まってきます」

2020年の国勢調査で、都道府県別の年代別の人口構造をみると、東京都は40代が最も多い16.1%、次いで50代の14%、3番目が30代の13.9%となっています。

一方、富山県は最も多い年代が70代の15%で、次いで40代の14.4%、3番目が60代の13%でした。

天野馨南子さん:「残念ながらですね、非常に人口構造が高齢化しています。富山県は30代前半、34歳までの人口がどれぐらいいるかというと、全体の28.8%しかいないんですよ。これはですね全国水準の31.7%からも遅れてますし、次世代を育む人口がとにかく足りてないんですね。正直ですね、この社会減というのを止めていただかない限り、子育て支援はもうずれてます」

20代女性が次々と県外へ…

県内の2023年の出生数は過去最少となる5859人でした。また、県外に転出した女性の数は1115人で、このうち最も多かったのが20代前半の662人でした。

天野さんが考える富山県の最大の課題は、若い女性の流出を止めること。その対策のためには、まず富山県内の企業に対し、「若い女性に選ばれるための努力」が必要だと主張します。

また、富山県内の企業分析やマーケティングを行う帝国データバンク富山支店の大場正範さんは、富山県の企業が、若い世代から就職先として選ばれるためには会社の価値やPR方法を工夫していく必要があると、採用活動の基本施策の重要性を強調したうえで、企業の発信力にはまだ改善の余地があると指摘します。

帝国データバンク富山支店・大場正範さん: 「対外発信ホームページもそうですけど、会社説明会であったりとか、働きやすさとか実際にどんな方が働いているのかとか、モチベーション高く働いている先輩社員にPRしてもらうとか、そういった形で…採用活動うまくいってらっしゃるケースってありますね」

人口減少が及ぼす県内経済への影響については。

帝国データバンク富山支店・大場正範さん: 「富山経済の特徴として、やっぱり富山の企業さん同士でお付き合いされている。いわゆる“内需”ですね。内需に依存した特徴ってあるんです。人が減っていくっていうことは、そこでの経済活動がしぼんでいくので、長期的に見ると、やっぱり非常に危機感ありますね」

人口問題、地域経済の専門家らが危機感を示すなか、22日、富山県は「県人口未来構想本部」の初会合を開きました。トップである本部長は新田知事が務め、そのわきを2人の副知事が固めます。会合の冒頭で、新田知事は県人口の減少に歯止めがかからない現状に触れ、「これまでの発想を大きく転換し、大胆な施策を打っていく必要がある」とあいさつしました。

22日は、県内人口の推移といった基本データが報告され、各部局長らが課題や決意を示しました。

松井邦弘こども家庭支援監: 「子育て中の方々からは、子ども連れだと混雑しているところで肩身が狭いとか、公園で遊ぶ子どもの声に苦情が寄せられるなどの声が上がっています。こうした声を大切にして子どもや子育てに温かく見守っていく社会全体の意識、雰囲気をもっと醸成していくことが必要だと感じております」

田中達也交通政策局長: 「人口減少等を背景に地域交通の経営環境、厳しさを増しております。事業者がサービスの向上に取り組むことがなかなか事業者単独では難しいとこういう状況にあります」

竹内延和生活環境文化部長: 「県内に生まれられた方々が、本県を離れたくないと思われる。もしくは戻りたいと思われる。また他県や他の国からここに移り住みたいと思っていただけるような環境をつくることで、人口の県外流出の抑制、外国人を含む移住や関係人口、交流人口の増加にもつながると考えられますので、当部といたしましてはそうした面で人口減少問題対策に貢献をしたい」

国推計76.2万人、県推計85.9万人のズレ

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では富山県の人口は2050年に76万2000人まで減る見込みですが、県が策定した人口ビジョンでは85万9000人となっていて、9万7000人分のずれが生じています。

こうしたずれを是正するため、富山県の構想本部では11月をめどに新たな人口ビジョンの骨子案をまとめる方針です。新田知事は、外部の有識者でつくる「成長戦略会議」とも意見交換しながら今後の人口減対策に取り組む考えを示しました。

新田知事: 「成長戦略会議と本会議とうまくキャッチボールをしながらともに政策を、大胆な発想の転換を図っていく。新しい施策を生み出していく。そんなふうになっていけばというふうに思っております」

※取材後記
富山県は人口減少の危機感から未来構想本部を立ち上げたわけですが、22日は新たな人口ビジョン策定とスケジュール以外に明らかになったことはなく、会議自体も30分で終了しました。人口減少は喫緊の課題だけに具体的な議論への早期の着手が望まれます。会議体を立ち上げるだけではなく、成長戦略会議と合わせて今後のスピード感と本気度が問われています。

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