“集団薬物疑惑”に揺れる中国競泳界。キャンプ地の劣悪な食事環境で検体汚染か。代表コーチは違反を否定「選手を100%信じている」

現地4月20日、東京五輪に出場した競泳中国代表の23人がオリンピックの数か月前に行なわれた検査で、採取された検体から心臓疾患の治療に使用される禁止物質トリメタジジンに陽性反応を示していたと豪紙『Daily Telegraph』のジュリアン・リンデン記者によって伝えられた。

五輪で3つの金を含む6個のメダルを獲得した中国だっただけに世界中のメディアが、この衝撃をこぞって報じた。混乱が生じるなか現地4月22日、豪州生まれの中国代表コーチを務めるデニス・コッテレル氏は「選手を100%信じている」と擁護したと、豪州の日刊紙『The Sydney Morning Herald』のインタビューに応えた。

ドーピング陽性が判明したのは、河北省の石家荘でトレーニングキャンプを実施していた際の検査だ。中国反ドーピング機関(CHINADA)と世界反ドーピング機関(WADA)の関係者は、「宿泊施設の流し台の排水溝、調味料入れ、厨房の換気扇によって汚染された食品からトリメタジジンが見つかった」と、劣悪な食事環境によって検体が汚染されたと結論づけている。

これを踏まえたコッテレル氏は、「もし汚染していたのなら、そこにリスクが潜んでいたのだからすごく残念なことだ」とコメントしたうえで、「選手を全面的に支持している。組織的な策略であると疑う人に対して異議を唱えられることを嬉しく思う」と続けた。
選手は普段から禁止薬物には十分に注意していると、同コーチは明かす。

「最近、空港で足止めされ6時間も我慢したことがあった。選手たちはどこにも食べにいけない。そのときは、ナショナルトレーニング施設が食事を用意し、選手たちが食べられるように空港に送ってくれた。それが彼らの日常だ。常にリスク回避して犠牲を払っているんだ」

選手を信じた74歳の名将は、「僕はパリまで彼らと一緒に戦う。選手が最高の結果を出せるように全力を尽くすつもりだ」と、今後について語った。

構成●THE DIGST編集部

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