父が残したタンス預金。毎月の「食費」として小分けで使えば、相続税の申告をしなくてもバレないでしょうか?

タンス預金がバレる理由

国税当局は総合的な管理システムにより、個人の資産や収入を詳細に監視しています。特に、普段とは異なる額の現金出入金があると、その動きはすぐに検知される恐れがあるのです。そうなると、タンス預金などの隠された財源があるという疑念を招くことになり、税務調査の対象となる場合があります。

例えば、相続案件において、生前には年間約2000万円の収入があった被相続人の申告財産が500万円だったとしましょう。このような場合、国税当局は申告された金額と実際の収入水準の間に大きな乖離(かいり)があると判断し、さらなる調査を行う可能性が高くなります。

国税当局はさまざまな手段を用いて、個人の金融活動を監視し、不一致が見られる場合はさらに詳細な調査を行います。したがって、タンス預金が存在している場合、それを申告せずに使い続けることは大きなリスクを伴います。合法的な内容で税務申告を行い、法に触れることなく資産を管理することが重要です。

こんな人は税務調査の対象に

税務調査では、特定の状況にある人がより注目される傾向があります。その中でも、相続税に関する不正確な申告を行った人、または申告を怠った人は、調査の対象となりやすいのです。これには、計算ミスが含まれた申告書や、相続があったにも関わらず税務申告が全く行われていないケースも含まれます。

相続案件では、税務当局は被相続人の財務状況について詳細に調べます。ここで重要となるのは、過去10年間の預貯金の動きです。

これにより、特に大きな金額の引き出しがあった場合、その資金がどこに消えたのかを究明していきます。大規模な引き出しは、隠された財産の存在を示唆すると考えられ、税務調査の引き金となることがあります。

例えば、ある相続人が、被相続人の通帳から亡くなる直前の2年間にわたり毎月50万円を引き出していたとしましょう。この行動はタンス預金を増やすための行為とみなされかねません。このように、相続税申告においては、過去の財務活動が厳しく検証されるため、正直かつ正確な申告が求められます。

小分けで使えば大丈夫なのか?

タンス預金から小額を定期的に引き出して生活費として使うことは、表面上は目立たないかもしれません。しかし、支出パターンが急に変わったり、通常の生活費に比べて大きな支出が見られたりすれば、税務当局の注意を引く可能性があります。

例えば、ある家庭が毎月10万円を生活費として使っていたが、突然毎月30万円を超える支出が始まった場合、この変化は疑問を呼び起こすでしょう。

特に、相続後の支出が急増している場合、この増加分の原資がタンス預金であることが疑われます。年間の生活費が前年比で数百万円増加していれば、その差額の出どころについて疑念を持たれる可能性があるのです。したがって、たとえ小分けにして使用しても、総額が膨大であれば、その出どころについての疑問は避けられないでしょう。

タンス預金も漏れなく申告しよう

父が残したタンス預金をこっそり使うことには税務上のリスクが伴います。小分けで使う戦略も一定の効果はあるかもしれませんが、完全に安全とは言い切れません。

とくに、相続絡みの税務調査の目は厳しく、不自然な金銭の動きはすぐに検知される可能性があります。合法的な節税方法を探求し、長期的な視野で賢明な行動をとるようにしましょう。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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