青森・七戸町の殺人など七つの罪 被告の男に懲役30年求刑 青森地裁

 2020年、青森県七戸町で事故を装って知人男性を除雪機でひき殺したなどとして、殺人や殺人未遂など七つの罪に問われた本籍七戸町、住所不定、無職の男(37)の裁判員裁判は22日、青森地裁(藏本匡成裁判長)で結審した。検察側は懲役30年、除雪機とエンジンキーの没収を求刑。詐欺罪以外を否認している弁護側は執行猶予付き判決を求めた。判決は5月22日。

 検察側は量刑判断で中心となる殺人と殺人未遂を軸に最終論告を展開。中古重機買い取り販売会社を経営していた被告が、重機売買代金などを巡りトラブルになっていた同町の土木会社臨時社員工藤勝則さん=当時(64)=の追及から逃れようと殺害した「命を軽視した卑劣な犯行」と訴えた。

 殺人未遂事件で事前に被告運転車両の後輪ブレーキホースを切断し、事故を装い目撃者に仕立てるために被告自身の妹を同行させた上で車両を海中転落させた点から「計画性の高さ」を指摘。殺害に失敗した3カ月後、工藤さんを実家に呼び出し、約414キロの除雪機を背中に乗り上げさせ死亡させており、「強い殺意がある」と強調した。

 量刑は「極めて短絡的、身勝手な理由で9カ月の間に11件の事件を起こした。再犯の恐れは極めて大きい」とし、同種事案の量刑傾向も踏まえ、有期刑で最長の懲役30年とした。

 弁護側は殺人、殺人未遂、放火関連などは無罪を主張。殺人事件について工藤さんが除雪機の下敷きになったとされる時間帯に被告は現場におらず、検察側から現場にいたことの証明もされていないと反論。工藤さんを雪上にうつぶせにした方法の立証もないとした。

 また、殺人未遂事件の車両転落時、被告の車は前輪しかブレーキが効かない状態に陥っており、被告は慌てて適切なハンドル操作ができなかったと主張。ホースの切断原因は専門家の間で見解が分かれ、木や石の接触が要因の可能性もあるとし「事故だった」と述べた。

 検察側の最終論告後には、被害者参加制度を利用して遺族の代理人弁護士が「死刑に処するのが相当」と意見陳述した。

 被告は最終意見陳述で「仕事の付き合いのある方々にうそをつき申し訳ないことをしたと心から反省している。うそをつかず、一つずつ前に進んでいきたい」と述べた。詐欺罪以外の起訴内容は「私は何もやっていない」と改めて関与を否認した。

 起訴状によると、20年9月23日、八戸市の八戸港で工藤さんを被告運転の軽トラックの助手席に乗せて海に転落させ殺害しようとし、12月23日には、被告実家敷地内で、工藤さんの背中に家庭用除雪機を乗り上げ、死亡させたとされる。21年5~6月、同市、七戸町、三沢市、藤崎町で住宅や物置小屋などに火を放ち、同年2~4月、男性3人から計933万円を詐取したとされる。

© 株式会社東奥日報社