世界の経済学者、中国生産能力過剰論に疑問

世界の経済学者、中国生産能力過剰論に疑問

15日、第135回広州交易会で、新エネルギー車を見るバイヤー。(広州=新華社記者/盧漢欣)

 【新華社ワシントン4月22日】一部の西側先進国はこのところ、いわゆる「中国生産能力過剰論」を絶えず誇張しているが、ワシントンでこのほど開かれた国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合では、エコノミストや専門家の多くが「理解しがたい論調」だと指摘し、市場需給と産業面の現状のいずれから見てもこうした結論を導き出すことはできないとの見方を示した。

 アナリストの多くは、中国生産能力過剰論は事実上、中国経済を中傷・抑圧しようとする一部の西側諸国の政治手段だと主張。目的は自国利益の擁護であり、結果として世界貿易の正常な協力関係を妨げ、各国の共同利益を損なうとした。

 「私も理解できない…」。英ロンドンに本部を置く投資銀行バンク・トラスト(BancTrust)でアフリカのソブリン債と企業の与信調査を担当するアヨデジ・ダオドゥ氏は取材に対してこう語った。ダオドゥ氏は、アフリカ諸国は中国から機械や衣類、その他必需品など多くの製品を輸入し、中国と互恵的な経済・貿易関係を維持しているが、中国の過剰な生産能力を示すものはなく、逆に「アフリカは力強く発展する中国を必要としている」と語った。

世界の経済学者、中国生産能力過剰論に疑問

自動車産業に参入した中国スマートフォン大手、小米集団(シャオミ)の「小米汽車」生産ライン。(3月25日撮影、北京=新華社記者/彭子洋)

 米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラディ上級研究員は、生産能力過剰論の背後にある反グローバリズムと保護主義に懸念を示した。ラディ氏は、経済学者の一人としても過剰生産能力を判断する基準ははっきり説明できないとし「この考え方に沿えば、どの国も国内で販売できる以上のものを生産してはならないということになる。ではボーイングは減産すべきなのか。米国の大豆農場も減産すべきなのか」と述べ、競争力のある電気自動車(EV)メーカーは国内のみに製品を供給し、輸出すべきではないという論調が極端に進めば「国家間に貿易はなくなり、世界にとって経済的な大惨事になるだろう」との考えを示した。

 米シンクタンク「経済政策研究センター」(CEPR)のシニアエコノミスト、ディーン・ベイカー氏は、中国のEVと太陽光発電製品の費用対効果が高いのは世界にとっては好ましいことだとし、これらの製品を巡って貿易摩擦が起こるなら「非常に不幸なことだ」と語った。

 IMF・世銀春季会合で経済学者らが実際に議論したのは貿易の制限ではなく促進だった。IMFチーフエコノミストのピエール・オリヴィエ・グランシャ氏は、貿易制限などの措置が近年急増したことで世界経済の中期的な成長見通しが損なわれたと指摘。効率を低下させ、世界経済の強靭(きょうじん)性を一層弱め、世界の協力を損なう恐れがあると語った。

世界の経済学者、中国生産能力過剰論に疑問

中国の風力発電機大手、新疆金風科技(ゴールドウインド)がタイ北東部チャイヤプーム県に設置した風力発電機。(2023年10月5日撮影、小型無人機から、バンコク=新華社記者/王騰)

 「新エネルギー分野における中国の比較優位を脅威とすべきでない」。英国際会計事務所グラントソントン・インターナショナルのパートナー、オリバー・ハンチ氏は取材に対し、中国が費用対効果の高い製品を提供できるのは比較優位があるからだと説明。競争力のある中国製品は世界市場に大きなチャンスをもたらすとし、新エネルギーや電気通信などの分野で中国製品の輸入を制限すれば、英国の消費者は中国の技術進歩による恩恵を受けられなくなると指摘した。

 日本の自動車業界に詳しいみずほ銀行ビジネスソリューション部の湯進(とう・しん)主任研究員は、EVは世界で発展のさなかにあるとし「過剰生産能力など存在しない」と強調。EV分野で中国生産能力過剰論が叫ばれるのはイノベーションや技術、産業チェーンの面で中国製品の発展が速く、一部の国の従来型自動車メーカーが対応に苦慮しているからだと述べた。

 湯氏は、一部の先進国が中国生産能力過剰論を唱えるのは単に自国利益の擁護のためで、中国の発展の勢いを抑えつけ、競争でより有利な地位を占めたいからだと語った。

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