ストレートが遅いのになぜ? 今永昇太が山本由伸を成績で大きく上回っている“意外な理由”

今永昇太(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

山本由伸と今永昇太。2人の日本を代表する投手が海を渡ったのは2024年のことだった。

山本はドジャースと12年総額3億2500万ドル(約455億円)、今永はカブスと4年総額5300万ドル(約77億4000万円)といった契約からは、山本への期待のほうが高かったことがうかがえる。パ・リーグ時代の2021年から23年まで、史上初の3年連続投手四冠を達成した実力を考えれば、それも当然のことだったのかもしれない。

ところがメジャーでの序盤戦とはいえ、ここまでの2人の成績には逆転の現象が見られる。山本はここまで5試合に登板し1勝1敗だが、防御率は4.50と苦戦している。

一方の今永は4試合に登板し3勝0敗。防御率も0.84と文句のつけようのない成績を残している。

2人は右の山本、左の今永と分かれるが、ともにストレートを軸に多彩な変化球で三振を奪える投手だ。それぞれ、ここまでの奪三振が山本が30(奪三振率12.27)、今永が21(8.86)と高い数字を誇っていることからも分かる。

では、なぜここまで成績に違いが出ているのか、現地記者が解説する。

「2人ともストレートが軸なんですが、球速には大きな違いがあります。山本は常時150キロ中盤で、速いときは157~8キロを計測することがあります。対する今永はスピードが乗ってせいぜい150キロ。平均では150キロを割ります。ところが、今永のストレートのほうが打たれていないんです」

球速がなくても打たれないというのは、いったいどういうことなのか。前出の記者は、その意外な理由について語る。

「今永のストレートは打者のインハイへの投球が多い。自分に近いところに投げてくるので、打者はそれほど球速が出ていなくても速く感じ、伸び上がってくるような錯覚にとらわれるとよく言っています。なので、より外めの変化球が生きてきます。

でも山本のストレートは外角低目が中心。いくら速くてもリーチがある選手が多いので、届いてしまう。自分から遠いことで球速もあまり感じない。またあまり高めを投げないので、高低を使っているとはいいがたい部分があります。決め球のカーブも低めにきますから、ストレートもカーブも低め。だからカーブを打たれ始めているし、見送る打者も多い。山本としては、思い切ってストレートをインハイ高めに投げ、変化球は外の低め。高低をもっと使ったほうがいいでしょう」

4月20日、山本は5度めの先発で6回初のクオリティースタート(6回以上を自責点3以下)を達成した。ロバーツ監督は「6回を投げきったことはよかった。ただ、次回の登板ではストレートの制球をもう少し上げて欲しい」と注文を出した。

思い切ってインコース高めを突けば、活路は見出される!

© 株式会社光文社