「百英雄伝」レビュー 100人以上の仲間集めや街作りなどやりこみ要素も満載! 懐かしいだけじゃない令和生まれのJRPG

by 高島おしゃむ

【百英雄伝】

4月23日 発売

価格:

5,380円(通常版)

8,690円(デジタルデラックスエディション)

惜しくも今年の2月にこの世を去った村山吉隆氏と、河野純子氏が25年ぶりにタッグを組んだことでも話題になったRPG「百英雄伝」。2020年にクラウドファンディングを行ない、4年以上の歳月を掛けて開発が行なわれてきた作品だが、4月23日に全世界で発売が開始される。

本作には、JRPGという表記でジャンルが付けられており、ゲームを起動したときにも「With our appreciation to all JRPG fans(すべてのJRPGファンに感謝を込めて)」といったメッセージが表示される。どことなく、スーパーファミコン時代を彷彿とさせるグラフィックスなどオールドゲームファンにとってはどこか懐かしい、それでいながら馴染みやすい作品に仕上げられている。だが、それだけで終わらず、現代のゲームらしいシステムも多数盛り込まれており若いゲーマーが遊んでも見劣りしない作りになっているところも魅力だ。

ゲームの発売に先駆けて、本作のPC版をプレイする機会がもらえた。こちらの記事では、そこからわかった作品の特徴や魅力などについてレビューしていく。少しばかりのネタバレ要素も含まれているため、その点はご了承願いたい。

プレーヤーは主人公のノアをはじめ、様々なキャラクターたちと共に冒険を続けていくことになる

個性豊かな100名以上のキャラクターたちを仲間にしていこう

本作の主人公は、警備隊として参加することになった若き青年のノアだ。その最初の任務は、ガルディア帝国との共同作戦でルーンの遺跡の正確な場所を見つけ出すというものだった。その冒険で発見した「原初のレンズ」が、世界を揺るがす事態へと発展していく。

「原初のレンズ」は、人がそれを宿すと大きな力を持つと言われる魔力の塊だ。それがきっかけとなり、友好的な関係になると思われていた帝国軍が侵攻を始めることになる。ノアたちは、エリティスワイスでの防衛戦で帝国軍相手に善戦したものの、敵の援軍が出現しやむなく敗退。その後、帝国軍に立ち向かっていくために同盟軍を旗揚げし、ボロボロになった廃城を拠点にして戦っていくことになるというのが、大まかな序盤のストーリーだ。

帝国との共同作戦で見つけた「原初レンズ」は大きな発見だったが、それがお互いの陣営の間に亀裂を産むことになる

本作では、会話シーンは非常に重要な要素だ。刻々とまわりを取り囲む状況も変化していき、その都度新たな登場人物たちも出てくる。そうしたこともあってか、キャラクターたちが話すセリフも、場面によっては吹き出しに色が付けられていたり、キャラクターの表情も変化したりする。

それに加えて、すべてのセリフはフルボイスで再生されるため、感情移入がしやすくなっているところもポイントだ。声を担当する声優陣も豪華で、梶原岳人さん、赤羽根健治さん、上坂すみれさん、江頭宏哉さん、千本木彩花さん、藤田昌代さん、日笠陽子さん、釘宮理恵さんといった、そうそうたる面々が名を連ねている。

月に変わってお仕置きしてくれそうな魔法少女のメロール。声を演じているのは釘宮理恵さんだ

「百英雄伝」とタイトルに付けられているのはダテではない。本作では、なんと100名以上ものキャラクターたちを、自分たちの仲間にしていくことができるのだ。登場する人物たちが持つ背景や性格、あるいは戦闘能力などもそれぞれ異なり、いずれも個性豊かなものばかりである。

たとえば、ゲーム序盤の共同作戦で共に冒険することになる帝国士官のセイ・ケースリングと主人公のノアは、冒険を通じてお互いの友情を育むものの、それぞれの立場の違いから1度は袂を分かつことになる。しかし、その後セイは自らの正義感から、ふたたびノアと手を組んでいくことになる。このように、登場人物たちとの様々な出会いがあり、それがドラマチックに描かれているのである。

敵にすると手強く、仲間にいるとこれ以上にない心強さがあるノアの盟友セイ・ケースリング

能力という面に関しては、それぞれのキャラクターには、「魔導レンズ」と呼ばれる特別なスキルを持っている。これは元々備えている特徴にも繋がっているのだが、攻撃スタイルや魔法、ステータスの上昇など、一部の「魔導レンズ」については、プレーヤーの好みでカスタマイズしていくことができる。

ルーンは戦闘中などで使用できるスキルのようなもので、レベルによってスロットが解放されていく。鎖が付いている以外のルーンについては、好みで別のモノに付け替えることも可能だ

これもキャラクターごとの能力の違いの一例だが、ゲーム中様々な場所を点々と移動したり、あるいは長い道のりを掛けて元の場所に戻ってきたりする必要がある。システム的に序盤はファストトラベルにあたるものは用意されていない。

そのため最初はそういうものだと思ってプレイしていたのだが、とある場所でテレポートが使えるキャリーというキャラクターが仲間になったことで、ある程度自由にファストトラベルすることが可能になったのである。個性的な能力を持っているだけではなく、見た目や性格も含めて癖の強い面々が続々と登場するというところも、このゲームの魅力となっている。

街中やダンジョンではカメラは固定だが、フィールドを移動しているときはある程度自由に動かせる
キャリーを仲間にすることができると、テレポートで移動が可能になる
テレポートを使うときは、マップを開いて場所を選ぶだけでOKだ

ギミックなど絶妙な駆け引きが楽しめるターン制バトル

RPGで物語と対になる重要な要素がバトルだ。本作では最大6人までのパーティを組んで冒険を続けていくことになる。パーティの編成はシンプルで、敵のダメージを受けるタンクやアタッカーの役割を受け持つキャラクターたちを前衛に配置。後衛には遠隔攻撃やヒールなどのサポートを行なうキャラクターを配置しておく。後衛にいるからといってダメージを受けないわけではないのだが、それぞれどのような役割を持つのか考えながら自分なりの編成をしていくといいだろう。

ちなみに、ほとんどの場合主人公のノアを中心にパーティを編成していくのだが、その時々のシナリオの状況によって、必須で組み込まなければいけないメンバーが決められている。つまり、強制的にパーティの編成を変えることが比較的多いのだが、そのつど新しく編成したキャラクターを使用することで、その仲間の能力に気が付くことができるところも面白い。

編成条件のところに書かれているキャラクターは必ず選ぶ必要がある

このゲームの特徴ともいえるが、特定の場所に出現するボスキャラクター以外の敵とのエンカウント率はあまり高くない。そのため従来のRPGと比較すると、戦闘の機会はかなり少ない印象だ。しかし、レベル上げのために無意味な戦闘を繰り返すといったこともなく、その分ストーリーの進行に集中することができる。

通常のバトルでは、大きく分けてふたつの選択肢がプレーヤーに与えられる。ひとつは、キャラクターごとの行動を自分で指定していく「戦う」だ。もうひとつは、オートで操作をまかせる「おまかせ」である。この「おまかせ」については、途中で手動に切り替えることもできるほか、戦うスタイルを細かく決めることもできる。

「戦う」または「おまかせ」を選んで戦っていこう
「おまかせ」で戦わせる場合は、あらかじめ「作戦」で行動を指定しておくといいだろう

バトル自体はターン制になっているのだが、手動でバトルを行なっていくときは画面上部に表示されている順に行動するというスタイルだ。コマンドの指定は前衛のノアから順番に指定していくのだが、そのとき敵より先に行動できるかどうかで行動を選ぶことで、効率よく戦っていくことができる。

ちなみに、「おまかせ」のオートバトルでは対応できない部分もあり、状況に応じて途中で手動に切り替えることも重要だ。たとえば、パーティのメンバーに関係性のある仲間がいる場合、「英雄コンボ」と呼ばれる技を繰り出すことができる。これは敵にも大きなダメージを与えることができるのだが、「おまかせ」を選んでいるときは発動されない。

もうひとつ、ボスキャラクターによっては特別なギミックが出現する場合がある。こちらは攻撃時に敵本体を狙うかギミックを狙うか選べるというものだが、ギミックを狙うことで敵の強烈な攻撃をかわしたり、ダメージを与えたりすることができる。こちらも「おまかせ」では自動でギミックを狙ってくれないため、手動で選んでいく必要がある。

画面上部に行動する順番が表示される。「おかませ」をキャンセルすると、次のターンから手動で行動を選ぶことができるようになる
ノアとセイ、メリッサの3人が順番に攻撃して大きなダメージを与えることができる「英雄コンボ」のマスターコンボ
ボスキャラのネルトゥス戦のときに出現するギミックの「マジカル・プリティ・グリモワール」。左右のどちらかに出現することを予測してギミックを発動させる。見事的中すると、巨大なハンマーで敵にダメージを与えることができる

軍隊vs軍隊のシミュレーションバトル要素も!?

このゲームをプレイしていてもっとも驚かされたのが、「戦争」と呼ばれるシミュレーションゲーム的な要素が盛り込まれていたことだ。こちらは軍隊同士の戦いとなっており、プレーヤーは部隊の移動先などを指定して攻撃を行なっていくことになる。

「戦争」では、細かいバトルは自動で行なわれるが、一定ダメージを受けたほうの部隊がそのエリアから一時撤退する。すべての敵を全滅させると勝利だ。

部隊ごとに移動先などをしていこう
戦闘自体は自動だ。そのときの戦況も表示されるため、見ているだけでも面白い

また、部隊に指示を与えるときに、軍隊長と副官のみ特別な「軍団コマンド」と呼ばれるものを出すことができる。たとえば「十字強化」は、自軍が居るエリアを中心に、範囲1マスの見方の攻撃が上昇するといった感じで、その戦況に大きな影響を及ぼすことができる。「軍団コマンド」自体はほかにもいろいろとあるので、実際に使用するときにどんな効果があるか確かめながら選ぶといいだろう。

「戦争」のもうひとつの要素として、画面下に表示されるゲージがある。こちらは味方がダメージを受けると赤い怒りゲージが溜まる。敵にダメージを与えた場合は、黄色い高揚ゲージが溜まっていく。それぞれゲージが溜まった時点でコマンドを発動することができ、怒りモードコマンドでは攻撃力を上昇、高揚モードコマンドでは敵軍隊の撤退を防ぐことができる。

戦況に合わせて軍隊コマンドも活用しよう
高揚モードコマンドを発動すると、黄色い集中線のようなものが画面に表示される

廃城を自らの力で発展させていく街作り要素

先ほどご紹介した序盤のストーリーで、主人公のノアたちは廃墟を拠点に活動していくことになる。ここから加わることになる要素が、街作りだ。最初はまさに廃墟といった見た目の場所なのだが、ひとつひとつの施設を作りあげていくことで、発展させていくことができるのである。

街作りはおんぼろの廃城の状態からスタートとなる

街の発展は、城内にいる「建築設計室」のアイリスに話しかけることでできる。こちらは、建物を建てる場所を選んでいくというものではなく、ツリー状になっている発展パネルを解放していくことで新たな施設が作られるといった仕組みだ。

発展パネルの解放には、本拠街資金と資源が必要となる。資源は冒険中に入手できるが、注意したいのは本拠街資金のほうだ。ついつい自分の手持ちのお金と混同してしまうのだが、そちらとは別のものとなっている。こちらは素材倉庫のケーンに集めた素材を売ることで、貯めていくことが可能だ。もちろん発展パネルの解放にも資源は必要なので、誤って売らないようにしよう。

100名以上のキャラクターを仲間にできることにも触れたが、実は街の発展に重要な影響を及ぼしている。特定の発展パネルを解放するには、その施設を担当する人物を仲間にする必要があるのだ。中には特定の条件を果たさないと仲間になってくれないものもおり、ちょっとしたサブクエスト的な要素にもなっているのである。

発展パネルを解放する条件を満たして開発を進めていこう
新たな施設ができるとともに、街の人口も増えていく
発展パネルの解放に必要な仲間を集めていくことも重要だ

街の発展の中で、もっとも重要なのが本拠街レベルだ。こちらをレベルアップすると、新たな発展パネルが解放される。それだけではなく、たとえばレベル2にアップすると、城内を一瞬で移動できる施設も利用可能になる。このように、利便性も含めて街全体を発展させていくことができるのである。

本拠街レベルを上げると、新たな発展パネルが出現する
本拠街がレベル2になると、城内を簡単に移動できる施設も登場する

100時間以上遊べる大ボリューム! ミニゲームなどやりこみ要素も満載

ひと通りゲームを遊んでいて気になるポイントをご紹介してきた。もちろんこれ以外にも、ミニゲームなど様々な要素が本作には盛り込まれている。そうした中で、特に今回遊んでみてユニークだと感じた部分は、やはり仲間を集めていくところだろう。それによって強力なパーティが編成できたり、街作りといったものも進めていくことができる。単純に数を集めただけの作品とは、ひと味違った意味のある作りになっており、そこが遊んでいて最も楽しく感じられた部分でもあった。

今回は20時間ほどゲームをプレイしたのだが、メインストーリーを終わらせるだけでも40時間、さらにやり込んでいくと100時間以上は遊べるようなボリュームとなっている。久々にお腹いっぱい楽しめるゲームを遊んでみたいという人は、ぜひ本作にもチャレンジしてみてほしい。

こちらはミニゲームのひとつ「シャークシップレース」。砂漠の上を颯爽と走り回り、タイムを競おう

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