アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、デブリの後方数百mの距離にまで接近に成功

運用を終了した衛星等のデブリは非協力物体と呼ばれ、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られない。

そのため、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつデブリに安全・確実にRPO(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するために不可欠な技術だという。

ADRAS-Jは実際のデブリへの安全な接近を行い、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みだ。具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行う予定だとしている。

2月22日より開始した接近の運用では、軌道投入時にはデブリと異なる軌道にあった衛星を、GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いて(絶対航法)デブリと同じ軌道へと調節し、デブリの後方数百kmにまで接近させた。

4月9日には、ADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)にてデブリを捕捉したことで、衛星搭載センサを駆使してデブリの方角情報を用いる相対航法(AON※4)を開始。この方角情報も用いながら相対軌道を制御して距離を詰め、デブリの後方数kmの距離において衛星搭載のIRCam(赤外カメラ)にてデブリを捕捉した。

そして4月16日、IRCamによって取得するデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(MMN)を開始し、ついにデブリの後方数百mへの接近に成功した。今後はさらに接近し、デブリの状態や動きを把握するための撮影に移るという。

これまでのADRAS-Jミッション運用実績

  • 2月18日:Rocket LabのElectronロケットにより打上げ
  • 2月22日:デブリへの接近を開始
  • 4月9日:相対航法(AON)と近傍接近を開始
  • 4月16日:相対航法(MMN)を開始
  • 4月17日:デブリの後方数百mへの接近に成功

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