イラストレーター・おがわじゅりさんのあふれんばかりの競馬愛 私みたいに馬にハマりませんか?

 「酒井君」

 馬のイラストレーター・おがわじゅりさんが、4月20~22日の3日間、東京都渋谷区のギャラリーで自身2度目となる個展『おがわじゅりの馬房展』を開催した。約7年ぶりとなるイベントを行い、「多くのファンの方々と触れ合えてうれしかった」と感謝の思いを口にした。彼女のあふれんばかりの競馬愛や、知られざる家族との日常、そして“神”とあがめる酒井学騎手への熱い思いを大いに語ってもらった。

 真剣勝負とはまた違った角度から、表情豊かな馬のキャラクターが競馬を盛り上げる。唯一無二と言える、おがわさんが描くほのぼのとしたイラストに心癒やされた方も多いだろう。

 あの柔らかなタッチは“馬愛”をストレートに表現したもの。「馬は好きだからめっちゃ見ています。耳元から首さしにかけて、どう動いているのか?行動をすごく見ていますよ」。もっとも大切にしているのは「楽しい気持ち」で描くこと。「馬に例えるなら、私は牝馬に多い“気持ちが大事”な子(笑)。悲しかったり、嫌な気持ちになると絵に出ちゃうんです。幸い、今はSNSなどで表現の場が増えましたよね。だから、そんな時は逆に絵にしてはき出しちゃいます」。擬人化した馬の人間味あふれる姿も、彼女のイラストの味となっている。

 最終日の22日。小雨が降る中、平日にもかかわらず、開場前には既に10人以上の列ができていた。「本当にありがたいです。きのうは京都から来られた方もおられました。しかも、ガチの酒井君ファン(笑)」。ウマ娘の影響か、最近は若いファンも増えたという。「ギャラリーに入ってきた瞬間“この子、タケシのファンだ!”って分かりますよ。若い子が競馬に興味を持ってくれるのはうれしいですね」。横山武史騎手とエフフォーリアのコーナーを目当てに訪れる若者も多かったそうだ。

 裏表がなく、メディアで見せる姿はプライベートでも変わらない。酒井学騎手に対する異常?なまでの“推し”ぶりをご存じの方も多いだろう。「酒井君は“人生を豊かにしてくれる騎手”。もはや家族の一部です。ウチの子は、酒井君が大きいレースを勝つと“おすしが食べられる”と思っていて(笑)。なので、勝てなかった時は“きょうは普通のご飯だな”って感じです。夫もよく成績をチェックしています。酒井君の誕生日には毎年、ケーキを用意して一緒にお祝いをして。全部、勝手にやってるんですけどね」と笑う。

 “努力は夢中に勝てない”とも言う。純粋な心で、思い切り競馬を楽しむ姿が、多くのファンに支持されてきた。「娘の友達が遊びに来た時、私がレースを見て騒ぐものですから、みんなが驚いて。特に、カルチャーデイがファンタジーSを勝った時は発狂しましたから。娘は友達に“気にしないで。いつものことだから”って冷静に諭していました(笑)。夢中になると自然に声が出ちゃうんです。でも、夢中の時って、不思議と疲れないんですよね」。競馬は幸福論。こういう家族関係もすてきではないか。

 デビュー20周年の区切りに開催した個展も、いよいよフィナーレを迎えた。「とにかく、来ていただいた皆さんに楽しんでもらいたかった。願わくば、この個展を見て私のように沼にハマる人がいてくれたらうれしいですね。あ、そうだ。酒井君、月曜日なら来てくれないかな!?」。この日も無我夢中。彼女の“楽しい気持ち”が、競馬の輪を広げていく。

 おがわさんが酒井を推すきっかけとなったのは、19年3月の大阪城S。「応援していたスピリッツミノルは友達の橋本助手(通称・水色兄さん)の担当馬。あの時、イチ推しの酒井君が乗りましたから、宮城県から日帰りで応援に行きました。結果は…13番人気でしたけど勝ってくれて!興奮しましたね。あの日を境に、私の中で酒井君は“神”になりました」。猛烈な推しぶりはYouTubeでご覧あれ。(デイリースポーツ・松浦孝司)

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