国土変動-能登半島地震と測量界の未来・2/段階的に復旧測量実施

◇位置情報を早期提供
被災地でのインフラ復旧や復興まちづくりには、いずれも位置情報(緯度、経度、高さ)が必要とされる。能登半島地震では位置の基準(国家座標)である電子基準点、三角点、水準点の位置が大きく変動した。これらに対応するため、国土地理院は測地基準点の復旧測量を実施し、災害復旧のための公共測量などで不可欠な位置情報の早期提供に取り組んでいる。
地震後に測量成果の公表を停止した地域に位置する一部の電子基準点を除き、改定した電子基準点の測量成果を2月7日に公表。三角点などの測量成果の公表を停止していた地域のうち、同15日には群馬、新潟、富山(氷見市を除く)、長野各県の測量成果を改定・公表するとともに、地震前の測量成果を地震後の測量成果に補正するための座標補正パラメーターの提供を開始した。
東京大学大学院の布施孝志教授は「位置の基礎となる基準点の測量成果改定が早急に望まれる中、電子基準点の測量成果改定が(発災から)1カ月程度で行われたのは素晴らしい」と評価する。
復旧・復興のための測地基準点の復旧測量は、予備費を充てながら段階的に進められている。1月26日に発表された第1弾では、成果停止となった緯度・経度の基準である三角点のうち、代表的な30点の復旧測量を実施。高さの基準である水準点は、早期に観測可能な水準路線290キロメートルについて水準測量を実施し成果を改定する。被災した電子基準点(P輪島)の復旧も実施している。
3月1日発表の第2弾として、能登半島北部や液状化による地殻変動の複雑な地域の三角点(100点)を対象に追加。水準点も同北部や新たに観測が必要となった水準路線250キロメートルを加えた。このほか被災した電子基準点3点(輪島2、富来、能登島)の復旧を推進。北陸地方測量部の白井宏樹部長は「業務完了までには数カ月から半年程度かかるだろう」と見通す。
水準点の復旧測量の一環で、測量系コンサルタント会社の八州(東京都江東区)は石川県穴水町から富山県高岡市までの約100キロメートル区間の水準路線を対象に、約2キロメートルピッチで置かれた一等水準点の調査業務を担当した。
3月上旬から2班体制で南北両端から水準点の周辺を見て回り、異常の有無などを確認。穴水側の作業班のリーダーを務める佐藤敬太氏は「水準点自体は大丈夫でも周りが地割れで崩れたことによる影響などは、ぱっと見ただけで分からない」と話す。穴水町の一等水準点9291については、道路と海岸線の間に地割れが発生し、測量機器で観測してみると柱石が海側に傾いているのが分かったという。
上下水道などのインフラ復旧に当たり、水準点は重要な役割を果たす。「震災前後で水準点の高さがそれぞれ異なると、下水道などを直しても波を打ったようになってしまう」(佐藤氏)。今回の業務ではまず状況把握と現時点の仮の高さを出し、今後の復旧測量につなげていく。

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