国交省/ダム本体工の入札参加者に3D設計データ提供、利賀・鳥海で試行

国土交通省がダム本体工事の公告時、入札参加者に対して3D設計データを提供する取り組みを試行している。計画地の地形条件や施工内容を工事前から把握できるようにし、技術提案の検討に役立ててもらう。2023年度に本体工事を公告した利賀ダム(富山県南砺市)と鳥海ダム(秋田県由利本荘市)の2件で提供。入札の参加者から意見を聞き取り、本格運用につなげていく。
国交省は従来、本体工事公告時に2次元の工事発注図を入札参加者へ提供している。しかし工事発注図は計画地の傾斜や高さ、ダムの大きさなどを把握しにくいといった課題があった。ゼネコンからの要望も踏まえ国交省はこれまで工事受注者だけに提供していた3D設計データを、入札参加者全員に提供する方針を決定。23年度の発注分から試行的に取り組んでいる。
23年10月に公告した利賀ダムの本体工事は、計画地が険しい山岳地帯にあり現地視察が難しい。3D設計データを提供することで、重機の搬入経路やコンクリートプラントの配置といった施工計画を立てやすくした。構造物の表示の有無を切り替えることも可能で、裏に隠れた設備などを考慮しながら技術提案できるようにした。同工事の落札者は決定済み。
鳥海ダムは1月に本体工事を公告し、17日に開札した。国交省は今後、両工事の入札参加者を対象にヒアリングを行う。3D設計データの提供による利点や課題を把握し、改善につなげる。
国交省は3D設計データの提供によって「画一的ではなく、さまざまな提案の幅が広がると思う。工事の検討段階から、事業者が技術力を発揮するための工夫の余地が生まれるのではないか」と期待する。現場状況に応じて施工計画を立てられることから、安全性や迅速性の向上にも効果が見込めるとしている。
23年度から国交省の直轄土木業務・工事でBIM/CIMの適用が原則化された。ダム事業でも設計段階から3Dモデルが作成されるようになった。同省はダムの設計から施工、維持管理までの全工程で3Dモデルを積極活用。無人化・自動化施工の実現を目指す。

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