遺体解剖の同意書 医師偽造か 長島愛生園調査 27%死後の日付

愛生園に残されている「剖検願」をとじたファイルと山本園長

 国立ハンセン病療養所・長島愛生園(瀬戸内市)で、入所者の遺体を解剖する前に本人から得たとされる同意書が、医師によって偽造されていた可能性があることが22日、園への取材で分かった。園が一部を抽出して調査した結果、27%に死後の日付が記入されていたという。本人の意思や人権を無視した解剖が行われていた懸念がある。

 ハンセン病療養所入所者の遺体解剖を巡っては、国の「ハンセン病問題に関する検証会議」が2005年の報告書で「患者を研究対象物として扱い、遺体解剖はルーティン化していた」と指摘している。解剖は主に昭和初期に行われ、本人か親族による承諾が義務づけられていた。

 同園には開園翌年の1931年から56年までに亡くなった1834人の解剖記録が残されており、園が32、33年と45~48年の計140人の同意書「剖検願」を照合したところ、38件が死後の日付となっていた。死亡当日は29件、亡くなる前日から7日前は59件、8日以前は14件だった。

 山本典良園長は「偽造は明らかで、解剖を始めた当初から行われたと考えられる」とした上で「危篤直前の患者から承諾を得ることは『死の宣告』と受け取られかねない。当時の医師は倫理的に問題がある承諾を取らなかったことを証明するために、あえて死後の日付を記録に残したのではないか」と推測する。

 国立ハンセン病資料館(東京)の内田博文館長(77)は「戦前から行われていた断種や堕胎の手術でも同意は形だけだったり偽造だったりした。同様に『医療』の名の下に非人道的な行為があったことが裏付けられた」と指摘し「今後同じような人権侵害を起こさないためにも法整備まで踏み込んで検証していく必要がある」と話している。

 調査は昨年12月末~今年1月に行われた。園は今後も解剖記録と同意書を保存した上で活用方法を検討する方針。

© 株式会社山陽新聞社