「朝、新聞を見て涙…」県内初の公立夜間中学、悲願の開校 求め続けた女性の思い 福島

4月16日に開校した福島市の公立夜間中学。その陰には、10年以上にわたり、公立校の開校を求めてきた女性の活動がありました。悲願だった開校の日に、何を思うのか。その一日を追いました。

生徒代表・高野吉富さん「もう一度勉強し直したいという私の夢が、こうして実現できることが、感激もひとしおです」

4月16日に開校した福島市の公立夜間中学「福島第四中学校天神スクール」。国籍も年齢も違う、17人の生徒が入学しました。

県内に初めて誕生した新しい学び直しの場。この日を誰よりも待ち望んでいた1人の女性がいました。

開校式に来賓として呼ばれた、大谷一代さん。2010年から、県内に公立夜間中学を作るよう、県や市に求め続けてきました。

学ぶことを望む人が、学べる社会に

大谷さん「朝、新聞を見て、涙が出るようでしたけど、結構普通に過ごしてしまいました。胸にこみ上げるという感じではないが、特別な日なんだなとしみじみ感じています」

中学生のときに、不登校となった弟の達雅さん。学び直すことを強く望んでいましたが、病気で亡くなりました。

大谷さん「達雅さんのことがあって、福島の人が同じ思いをする人がこれで少しでも減るといいなと思いました」

学ぶことを望む人が、学べる社会になること。これが、大谷さんの原点です。10年以上の悲願だった公立校の開校。大谷さんたちが運営する自主夜間中学からも4人が「転校」しました。

大谷さん「私たちが始めたささやかな運動がここまで多くの人に参列していただけるほどに結びついてきたこと、とても嬉しくありがたく思っています。市長の英断に感謝です」

一方、入学式を終えた生徒たちは、初めてのホームルームに臨んでいました。笑いが絶えない、夜の教室。先生たちは、エジソンやヘレンケラーのエピソードを交えながら、あきらめないことの大切さを伝えました。

1学年担任・山田光裕さん「強い意志をもって、この場に来て、入学式に臨み、一歩前に踏み出そうというみなさんとこういう機会を持てたことは、私たちとしても、非常に感動しています」

天神スクール最初の夜は、こうして幕を降ろしました。

自主夜間中学から転校した鈴木直幸さんは…。

鈴木直幸さん「中学生になったなという感じがします。昔の中学校の懐かしい感じがします。将来は学んだものを、身につけたものを生かして、世の中のことをもっと知りたいなと思います」

福島市に新たに灯った夜の教室の光。生徒は、それぞれの思いを胸に、きょうも机に向かっています。

さまざまな生徒を受け入れるための工夫

開校した「天神スクール」は、いろいろな立場の生徒を受け入れるため、他の学校にはない工夫もみられます。

ハード面でいうと、体が不自由な生徒でも使えるようバリアフリーのトイレが新設されたほか、照明は明るくて目に優しいLEDが採用されました。

そして、授業は1コマ40分。通常の中学校は50分ですが、天神スクールに通う生徒の対象は県内全域で、福島市以外から通う人もいます。帰りのバスや電車の時間に遅れないように、あるいは働く生徒でも無理なく学業が継続できるようにという配慮から、通常より短い時間が設定されています。

課題の1つは、遠方から通う生徒の交通費です。今回、郡山市から通う生徒もいて、福島市では住んでいる市町村に交通費の補助などを求めていますが、郡山市では「対応する予定はなく、検討もしていない」としています。

ただ、同じように通う学校が限定される特別支援学校には、遠方から通う生徒に交通費を補助する制度があります。ハード面だけでなく、こうしたソフト面でも、学びを支える制度の充実が求められています。

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