岸田首相が「新たな地元」の町長選で1人の新人を支援 自民党町支部は未推薦「しこり残れば次の衆院選に影響」の声

府中町長選の立候補予定者の事務所開きであいさつする岸田翔太郎秘書(画像の一部を修整しています)

 次の衆院選の区割り変更で岸田文雄首相(広島1区)の選挙区になる広島県府中町の町長選(5月21日告示、26日投開票)を巡り、岸田氏の事務所が自民党県連が推薦した新人の元町議の支援に力を入れている。ただ、党町支部は特定の立候補予定者の推薦を見送っており、一部からは党県連の対応に不満の声が漏れる。党関係者は「町長選でしこりが残れば衆院選に影響する」と懸念している。

 府中町長選にはいずれも無所属新人で、元町議の川上翔一郎氏(37)=自民党推薦、町議の寺尾光司氏(65)、町議の二見伸吾氏(60)、会社役員の松本真明氏(34)、元教諭の角田明広氏(61)の5人が立候補を表明している。

 3月末、川上氏の事務所開きには岸田氏の秘書3人が出席した。長男の翔太郎秘書は川上氏を全力で支援するよう指示されたと明かし「どういった方が町政を担うかは非常に重要だ」とあいさつした。

 党町支部には川上氏と寺尾氏の2人が推薦を依頼。党町支部は1月の総会で、全会一致が難しいためどちらにも推薦を出さない方針を決めた。だが、川上氏は広島市南区の党地域支部と岸田氏が代表の党支部を通じて党県連に推薦を求めた。

 他の依頼はなく、党県連は2月に川上氏の推薦を決めた。この決定に一部の党町支部所属の町議からは「地元支部の方針と異なる」などと不満の声が上がった。

 党県連幹部によると、岸田氏は「党が分裂しないように」と求めているという。ただ、党町支部所属の町議はそれぞれの判断で各立候補予定者を支援しており、党県議の一人は「首相が関わり過ぎるとしこりが残る」と複雑な表情を見せる。

 次の衆院選から広島1区には府中町とともに海田、坂の両町が加わる。海田町では昨年11月の町長選で党支持層が割れ、党推薦の現職が敗れた。別の党県議は「首相の新たな地元で党推薦候補が連敗するわけにいかない」と危機感を抱く。

 府中町の3月1日時点の有権者数は約4万3千人で新たな1区の10・6%を占める。町議会議長で党町支部の梶川三樹夫事務局長は「衆院選では一致団結して岸田首相を応援できるよう支部をまとめたい」としている。

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