アニメ『忘却バッテリー』“神改変”が話題 「怪物コンビ」に追加されたアニオリ描写が絶賛される理由は?

■「すごい改変」と話題!

『少年ジャンプ+』で累計閲覧数2億を超えるほどの人気を集めている野球マンガ『忘却バッテリー』。4月9日深夜から放送が始まったTVアニメ版は、原作を忠実に再現しつつ、オリジナルシーンやアニメならではの要素を楽しめる作品となっている。アニメと原作でどんな違いがあるのか、具体的に紹介していきたい。

まず『忘却バッテリー』のあらすじをざっくり説明すると、主人公の要圭はシニア時代に怪物キャッチャーとして名を馳せていた高校生。記憶喪失で野球に関する知識をすべて失った彼は、幼馴染みの怪物ピッチャー・清峰葉流火と共に、まともな野球部が存在しない“普通の都立”小手指高校に入学する。そこでふたたび野球の面白さに目覚め、高校野球に打ち込んでいくことになるのだった。

アニメ版でもこうした序盤の展開はほとんど変わっておらず、アニメーション会社・MAPPAによるハイクオリティな作画によって、物語の語り部的な存在である山田太郎と圭、葉流火の出会いが描き出されている。

そのなかで特筆すべきは第1話の冒頭、シニア時代の圭と葉流火が怪物級のプレイヤーだったことを示すエピソードだ。原作では2ページの尺で、山田が怪物コンビに打ち取られるところが描写されるだけだったが、アニメではこの部分を大幅に増量。藤堂葵が空振り三振に終わって歯を食いしばる場面や、盗塁をした千早瞬平が圭の送球によってアウトになる場面が描かれている。

藤堂と千早はシニア時代の敗北によって心が折れ、野球を止めようとしていた人物。偶然にも圭たちと同じ小手指高校に入学し、運命の再会を果たすことになる2人だが、その過去の姿が冒頭で先取り的に描かれた形になる。

夢を打ち砕かれる球児たちの姿がたっぷりと尺を使って映し出されたことで、怪物コンビの恐ろしさと業の深さが1話目から浮き彫りになっている印象。途中で挟まれる、「清峰葉流火と要圭は、最強バッテリーである」という山田のモノローグも効果抜群だ。

ちなみに原作ファンにだけ伝わる描写だが、このアニオリシーンでは国都英一郎が葉流火のピッチングと要圭のリードによって打ち取られ、打席で崩れ落ちる姿も描かれていた。

なお『忘却バッテリー』監督・中園真登のXでの投稿によると、同作のオリジナルエピソードについては原作者がネームを提供しているとのこと。さらに脚本会議にも原作者が参加し、脚本作りに携わっているという。

■高校野球を舞台に始まった「宮野真守劇場」

さらにアニメ版ならではの魅力となっているのが、声優たちによる演技。とくに圭役の宮野真守は、そのポテンシャルを最大限発揮している。

宮野といえば王子様的なイケメンキャラを演じることが多い一方、本人のキャラクター性も相まって、コミカルな演技にも定評がある声優。これまでに『桜蘭高校ホスト部』の須王環や『STEINS;GATE』の岡部倫太郎など、“様子がおかしいイケメン”の数々を生き生きと演じてきた。

一方で圭はシニア時代、冷静沈着に相方を導く“智将”のキャッチャーだったが、今では記憶喪失によって「アホ」と呼ばれるようになってしまったキャラクター。「パイ毛」が持ちギャグで、キャッチャー用のプロテクターを付ける際には「ダルいダサいクサい」と大騒ぎして呆れられていたが、宮野の演技によってそのテンションが120%以上完璧に再現されている。

そのほかのキャスト陣もハマリ役。淡々と冷静なツッコミを入れていく山田役の梶裕貴を筆頭として、揃いも揃ってギャグアニメ適性があるところが原作とよくマッチしている印象だ。

原作をリスペクトしつつ、その魅力を一層増しているアニメ版の『忘却バッテリー』。弱小野球部から始まる高校生たちの青春ストーリーは、まだ始まったばかりだ。

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