海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が、伊豆諸島の鳥島東方海域で夜間訓練中に墜落した。計8人が搭乗していた。救助された1人は死亡が確認され、残る7人は行方不明となっている。
墜落現場の水深は約5500メートルと深く、捜索活動は難航している。人命が最優先だ。防衛省や海上保安庁は行方不明者の発見、救助に全力を尽くしてほしい。
海自によると、ヘリ6機と艦艇8隻で潜水艦を探知する訓練を実施中だった。事故当時、墜落した2機のほかにもヘリ1機が飛行していた。それぞれのフライトレコーダー(飛行記録装置)が近い場所で発見されたことから、木原稔防衛相は「2機が衝突した可能性が高い」との見方を示している。
対潜水艦戦を想定した訓練では複数のヘリが近接する。さらに夜間で視認性が下がり、距離感の把握が困難だった可能性もある。
海自では2021年7月にも鹿児島県・奄美大島沖で夜間訓練中のヘリ同士の接触事故があった。2機が互いの動きを正確に把握しなかったことが原因として、海自は高度をずらして飛行する、接近しすぎた際に警報が作動するシステムの導入―などの再発防止策を講じていたという。
訓練は危険と隣り合わせであるものの、同様の重大事故を防げなかったのは、国防を担う組織として極めて深刻な事態だ。再発防止策に不備がなかったか、現場の隊員に徹底されていたかなど、詳細な検証が求められる。
日本周辺の海域では他国の潜水艦や船舶が相次いで確認されており、海自は警戒監視や情報収集などで出動機会が増えている。このため隊員の訓練機会が減り、練度が下がっているとの指摘もある。
平時の任務とともに、技量向上を図るための訓練が重要であることは言うまでもない。要員の在り方を含め、組織の構造的な問題についても解明すべきだ。
今回の事故について、木原防衛相は「飛行中の機体に異常を示すデータはなかった」と説明している。昨年4月、陸自のヘリが沖縄県宮古島付近で墜落し、10人が亡くなった事故では、墜落直前にエンジンの出力が相次いで低下した直接の原因は特定できなかった。
防衛省は機体の回収やフライトレコーダーなどの解析を通し、事故原因の特定と再発防止策の構築を急がなければならない。二度と同様の悲惨な事故を起こさないためには機器の不具合や操縦ミス、気象の変化など、さまざまなリスクを想定し、あらゆる対策を講じることが必要だ。