いつか必ず(4月23日)

 「未完」ではなくなるのか。スペインのバルセロナにある世界遺産サグラダ・ファミリア聖堂が着工したのは、日本の明治初期。140年過ぎた今も建設が続く中で先日、メインタワーが2026年に完成すると報じられた▼設計したガウディは31歳で主任建築家になった。資金難にあえぐ一方、規模は拡大する。73歳で生涯を閉じるが、完成したのは4本の鐘塔のうち1本だけだった。計画は引き継がれ、現在は日本人が主任彫刻家を務める。工期の短縮は、ITを活用した設計技術の進歩が背景にあるようだ▼「未完」の2文字に、震災と原発事故からの地域再生を思う。避難指示の解除は進んでも、かつての住民同士のつながりは十分に取り戻せていないという。お店が少なく、買い物や食事に事欠く地域も。14年目の春を迎えても、明日への課題は山積みだ。それでも帰還した住民は「必ずやり遂げる」と揺るぎない▼ガウディは生前、いつ終わるのかを問われ「1世代の仕事ではない」と答えた。いずれ完成の時はやってくる。聖堂建設に習い、世界中の人々と手を取り合いたい。未曽有の苦難を世代をつないで乗り越え、復興を遂げれば、その魂は世界遺産級だ。<2024.4・23>

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