【1人暮らし高齢者】社会制度の総点検必要(4月23日)

 1人暮らしの高齢者世帯が従来の予測を上回る早さで増加していくとの推計が今月公表された。2050年には全世帯の2割を占めるという。お年寄りの孤立を防ぎ、医療や介護を十分に行き渡らせられるのか。国と自治体は、誰もが安心して暮らせるよう、社会の制度を総点検する必要がある。

 世帯数の推計は、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が国勢調査の結果などを踏まえて5年ごとにまとめている。2050年に日本全体で5261万世帯となり、2020年比で310万世帯少なくなる一方、65歳以上の単身世帯は30年間で346万世帯増の1084万世帯になるとした。都道府県別は公表されていないが、本県の推移も同様とみられる。

 人口減や少子化に歯止めがかからない上に、未婚率の高い団塊ジュニア世代が高齢期を迎えるのが背景にある。予期されていただけに、国などが有効な手だてを打てずに来ている現状を映し出したとも言える。

 身寄りがない高齢者にとって、まずは住まいや居場所の確保が課題となる。身元保証人がいないため、賃貸住宅への入居や入院、施設入所の手続きが進まない事態も予想される。判断能力が低下すれば、日常の金銭管理が容易ではなくなる。詐欺被害などに巻き込まれる恐れもあり、心配事は多岐にわたる。孤立が貧困を助長する懸念もあり、就労支援も重要だ。

 身内や地域とのつながりが希薄化しているとされる中、誰が寄り添い、見守るのかが問われてくる。住み慣れた場所で医療や介護を受けられるようにする「地域包括ケアシステム」を各地で拡充するなどの対策が求められる。町内会など地域組織を有効に活用し、日ごろから声をかけ合い、気軽に相談できる態勢づくりも欠かせない。

 今は夫婦で暮らしている人でも、死別や離婚で1人暮らしに転じる可能性がある。未婚者だけの問題とは捉えず、中高年者全員で将来の地域社会の在り方を考えたい。

 県は最新データに基づき、人口ビジョンを今年度中に見直す。世帯数の変化にも視点を置き、実情に見合った行政、民間、個人の役割を明示するなど主導的な取り組みを期待したい。(角田守良)

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