【霞む最終処分】(34)第6部 リーダーシップ 政府㊤ 政治主導に方針転換 除染土再利用動き滞る

自民党東日本大震災復興加速化本部の総会。除染廃棄物の県外最終処分の対応強化を盛り込んだ第12次提言について議論した=2月28日

 「政府・与党が一体となって、政治主導で実現していくことが不可欠だ」。自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部が取りまとめ、3月6日に首相・岸田文雄に申し入れた復興加速化のための第12次提言は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た廃棄物の福島県外最終処分への対応の強化を求めた。提言の中で特に強調したのは最終処分量を減らすために欠かせない、除染土壌の再生利用を推し進める体制の整備を急ぐことだ。

 2012(平成24)年12月の政権交代以降、与党からの提言は、時々の政府の復興施策の根幹となってきた。自民党東日本大震災復興加速化本部長として、第12次提言の取りまとめを主導した根本匠(衆院福島県2区)は「提言に書くということは、役所の尻をたたくことになるんだ。政治がリーダーシップを発揮し、必ず再生利用を前に進める」と息巻く。

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 根本は昨年10月、前任の額賀福志郎の衆院議長就任に伴い、本部長を引き継いだ。最初の重要な任務が第12次提言の作成だった。

 年明けから精力的に動いた。復興庁や環境省など関係省庁の幹部らと週2回のペースで議論を重ねた。復興施策全般の課題を洗い出す中、特に気がかりだったのは除染土壌の県外最終処分に向けた動きが滞っている問題だ。ある「既視感」を覚えた。

 脳裏に浮かんだのは2012年12月に復興相に就いたころのことだ。県内の除染で出た除染土壌を集約・保管する中間貯蔵施設の建設が遅れていた状況と、最終処分の問題が重なった。当時の政府が中間貯蔵施設の整備を県に要請してから既に1年4カ月が経過していたが、建設地は定まらなかった。そこで、所管の環境省だけに任せるのではなく、復興施策の司令塔である復興庁も前面に出る対応を取った。政治主導によって難題を解決できたと実感した。

 除染廃棄物の県外最終処分は「2045年までに完了する」と法律で定められている。しかし、土壌の再生利用を実現するための県外での実証事業は、住民の反発を受けて頓挫したままだ。

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 第12次提言は結びで県外最終処分が完了するまでの法的期限に触れ、「残された時間は長くはない」とくぎを刺した。知事の内堀雅雄も昨年10月の講演で「たった22年しかない」との表現で時間的猶予のなさに言及した。与党と県の危機意識は一致している。

 提言から13日後の3月19日、政府は与党提言を反映させる形で、復興の基本方針の改定を閣議決定した。県外最終処分を政治主導で実現させる―。方向性が定まった。(敬称略)

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の再生利用や廃棄物の県外最終処分を進めるため、政府・与党は「政治主導」の姿勢を鮮明にした。その狙いと、実現に向けて求められる取り組みを探る。

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